食事の後、軍長達と騰を残し机を囲む。晶霞には片付けが終われば休むように伝え、部屋に下がらせた。
「晶霞を戦に連れて行く、と仰られたのですか」
「ええ、そう言いましたよォ」
「録鳴未、殿がそのように決められたのだ」
案の定、録鳴未が何かを言いたげに口を開きかけたが、先に隆国が制した。今までに何度か練兵には同行させていたが、戦となると話は別。隣に座る騰は黙ったまま視線を落として何かを考えている様子だった。
「録鳴未は快く思わないようですね。騰はどうですか」
考えを聞いてみたくて水を向けてみると皆の視線が騰に集まる。それでも軽々しく口を開こうとはせず、一呼吸置いてから話し始めた。
「晶霞は強い、実際に戦を経験すればもっと強くなるでしょう。ですが、晶霞より強い武将がいる事も事実」
「そうですね」
どれだけ強くなろうと、自分より強い武将がいれば負ける、死ぬ。そして、いつまでも勝ち続ける事はこの上無く難しいと私は知っていた。
ふと、摎を思い出す。彼女も私と同じ六将に数えられるほど強かったが、名も無い武将の前に倒れた。あの日を何度も後悔していた。晶霞は声が枯れるほど泣き、未だ姉の死に傷付き、囚われ、その後ろ姿を追う。そんな晶霞を大切に思いこそすれ、みすみす好んで危険な目に合わせるような事があろうか。
「戦に行けば常に死が付き纏います、そんな事は殿も分かっておいでだ」
「……」
「ならばそれ以上の理由がお有りなのですね」
子供、子供と思っていた。もう辛い思いをする事が無いよう私が守ってやらねばと。だが晶霞はもう子供ではなくなっていた。自分で考え、道を歩き出そうとしている。危険であると分かっていても、そこに居場所を見出そうとしている。
「晶霞は私に、恩返しをさせてほしいと、摎や私と同じ景色を見る機会を与えてほしいと言いました」
「……それは、とても晶霞らしい」
小さく呟いた騰の表情は私が見た事が無いもので、それに少し驚いた。
思えば騰は晶霞の面倒を良く見てくれる。摎が死んでから、騰は彼女の剣の相手をしたり、練兵に連れて行くよう進言したりと気遣う素振りを見せた。騰にも思うところが有るのかもしれない、何が晶霞の為になるのかと。
「その為に強くなりたいと、血に塗れ戦いたいと乞うたのです。彼女の覚悟を目の当たりにして、私は負けたと思いました」
一歩も引かぬと膝をつき、額を地に付け私に覚悟を見せた。あんなに真剣で真っ直ぐな思いを説き伏せる言葉を私は持たない。騰にも伝わるだろうか、彼女の思いの強さが。
「殿がそう仰られるのでしたら私は晶霞に、危険を避けるのではなく、正面から退ける力を授けましょう」
騰が力強く頷く。他の軍長達も頷きながら私を見た。思わず目を細め息をついた。良き部下達に恵まれた。きっとこの軍は晶霞にとって得るものが多いに違いない。
「フフ、それは本当に心強い。頼みましたよ」
きっと更に大きく成長出来るだろう。いつの間にか私の手を離れて、という事も有り得るかもしれない。それは少し寂しい気もすると、場違いにも微かな感傷をおぼえた自分に一人頬を緩めた。
To be continued.