02
ジョディさんと会ってから数週間が経ったけれど、未だに赤井さんからの連絡はない。
赤井さんが亡くなったとジョディさんから告げられたあの日、家に着いてからすぐに赤井さんの携帯に電話をかけた。当然のように繋がらなかった。
間違えたかもしれないと思って何度も電話をした。
やっぱり結果は全て同じだった。
もちろんメールも送った。
どれだけ待っても返事が来ることはなかった。
信じられなかったジョディさんの言葉がだんだん現実味を帯びてくる。突き付けられる現実が怖くて、辛くて、思わず目を背けたくなる。逃げたところで何も変わることはないのに、夢であってほしいと今でも願い続けていた。
赤井さん、本当にいなくなってしまったの……?
どれだけ信じられなくても、ジョディさんが嘘をつくとはとても思えないし、赤井さんからはずっと何の音沙汰もない。
やっぱり本当なんだろうか。
あの日以来、布団に入ると毎日のように涙を流しながら眠りにつく。朝起きて一番に携帯を見ては、通知が一件もないことに肩を落とす日が続いていた。
日に日に赤井さんがいない淋しさに苛まれた。
声、匂い、仕草、表情、全てを思い出しては涙が溢れる。
大切な人の死がこんなにも簡単にやってくるなんて。
私これからどうやって生きていけばいいのだろう。自分がこんなにも脆い人間だったなんて、赤井さんと出会うまで知らなかった。
そういえば赤井さんに最後に会った日、いつもの赤井さんなら言わないようなことを言っていた。様子もいつもと違っていたような気もする。あのときはなんの冗談だなんて思っていたけど、まさか……。
あの日の赤井さんの言葉を思い出す。
『名前、俺にもしものことがあったときは……』
『……俺のことは忘れてくれ』
『そのときは名前のことを大切に思ってくれるやつを見つければいい』
『俺に気兼ねする必要はない』
『そんな顔をするな。もしもの話、だ』
もしかしたらあのとき赤井さんは、何かを悟っていたのかもしれない。だから急に家に来て、あんなことを言ったのだろうか。
そうでなければ赤井さんがあんなことを言うはずがない。どうして私は、それに気付けなかったんだろう。
それなら私にも教えてほしかった。
……聞いていたら私に止められたのだろうか。何がどうなってこんなことになったのかも分からないのに。
多分私には、縋ることしかできなかっただろう。
それはきっと赤井さんを困らせることになるだけ。
でも何も言わずに突然いなくなるくらいなら、あんなことも言わないでほしかった。こんなにも好きなのに、大好きなのに忘れられるはずなんてない。
忘れろだなんて簡単に言わないで。
赤井さん、逢いたいよ。
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