18
「はい」
『あ、昴さん急にごめんね。コナンだけど……』
『俺たちもいるぜ』
「あぁ、君たちか。少し待ってくれるかい?」
『はーい』

聞こえてきたのはコナンくんと知らない子どもたちの声。秀一さん、もとい昴さんはコナンくんたちに返事をすると、通話中のインターホンを切ってこちらに戻ってきた。

「ボウヤが友人を連れてきたようだ。名前も来るか?」
「いいんですか?」
「あぁ、もちろん」

いつもどおり昴さん≠フ柔和な笑顔を浮かべながら、ソファーに座ったままの私に手を差し出している。差し伸べられた手をとり、私たちは玄関へと向かった。

繋いだ手を離すのは名残惜しいけれど、子どもたちの前で手を繋いだままでいるわけにもいかない。それは彼も同じだったようで、手を離す代わりに唇に触れるだけのキスを一つ落とした。

不意をつかれて照れる私を見て、昴さん≠ヘ小さく笑みを浮かべている。そんな彼にやはり敵わないのだと思い知らされるのだった。

玄関ホールに私を残し、昴さんは玄関の鍵とドアを開けた。ドアの前に立っていたのはコナンくんと、三人の知らない子どもたち。どうやらコナン君の同級生らしい。

「こんにちはー!」
「昴さんごめんね。本当はボク一人で来るつもりだったんだけど、コイツらが行くって聞かなくて……」
「コナンだけウマいもん食うなんてずりーからな」

元気で子どもらしい彼らを前にしても昴さんは全く動じることもなく、むしろこの状況に慣れているようにも見える。子どもたちの身長に合わせて前屈みになっている姿を見るのも初めてだった。

なんだか新鮮だ。昴さんが子どもたちと親しくしている姿を見るのは。その昴さんを演じているのが秀一さんなのだから尚更だ。優しい人なのは充分すぎるほど知っているけれど、てっきり子どもは苦手なのかと思っていた。

「名前さんこんにちは。ごめんね、お邪魔しちゃって……」
「ううん、全然。私もお邪魔してる身だから。こちらこそごめんね」

唯一面識のあるコナンくんが玄関ホールの隅でひっそりと佇む私に気付いたようで、昴さんの横を通り過ぎて私の方へとやってきた。コナンくんが移動してきたことで、一緒にいた少年少女たちの視線が一斉に私に集まる。

「お姉さんだーれ?」

初めにこちらに向かって声をかけたのは、カチューシャをした可愛らしい女の子だった。小首を傾げてじっと私を見つめている。きょとんとした顔には小学生ならではの幼さと愛らしさがあり、母性がくすぐられるような気がした。

「私は苗字名前。ちょっとだけここでお世話になってるの」
「居候ですか?」
「コナンみたいだな!」

男の子たちが続けて話しかける。居候という言葉なんてよく知っているなと関心しながらどう説明するか悩んでいると、私が答えるよりも先に女の子が口を開いた。

「光彦くんも元太くんも違うよー! こういうの、同棲って言うのよ。ね、名前お姉さん!」
「えっ!?」

女の子の言葉に私の方が動揺を隠せなかった。空き巣の件があって少しの間お邪魔しているだけなので居候という言葉が正しいと思うのだけれど、世間一般的に見れ今のこの状況は同棲しているように見えるのかもしれない。

「ってことは、もしかして昴さんの……こ、恋人ですか!?」
「昴の兄ちゃんも隅に置けねーな!」
「哀ちゃんも来ればよかったのにねー!」
「えっと……」

恋人というのは間違っていないので否定はしないのだけれど、果たしてここで肯定してしまってもいいのだろうか。どうするべきなのか確認しようと思って昴さんに視線を送ると、いつもの昴さん≠フ微笑みを浮かべているだけ。……秀一さん、もしかして私の反応を見て楽しんでる……?

「オメーら、名前さん困ってるじゃねぇか」

助け舟を出してくれたのはコナンくんだった。続けて昴さんが子どもたちにリビングに移動するよう声をかけると、子どもた迷うことなくまっすぐリビングに向かっていく。きっと何度もここに来たことがあるのだろう。素早い子どもたちとは対照的に、玄関ホールに取り残される大人二人。子どもたちに聞こえないよう、小声で隣にいる昴さんに話しかける。

「今、絶対楽しんでましたよね……?」
「困惑する名前も可愛かったよ」

やっぱりそうだ。隠すどころかあっさり認めた昴さんは私の頭に手を乗せて、ぽんぽんと軽く叩いた。

「もう! 少しくらい助けてくれてもいいじゃないですか……」
「あぁ、すまない。名前の反応を見ていたかったんだ。では僕たちも行きましょうか?」
「……はい」

今度は昴さんの口先だけの謝罪の言葉を聞いてから、私たちは子どもたちに続いてリビングへと向かった。



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