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楽しそうに話す子どもたちと、その輪から外れて私たちのほうへとやってくるコナンくん。

「昴さん、ちょっと話があるんだけど……」
「ん? どうした、ボウヤ」

昴さんは目の前にやってきたコナンくんの身長に合わせて腰を屈め、そっと耳を傾けた。なんとなく二人を包む空気がピリついているような気がする。

「私、子どもたちにお茶とお菓子準備しますね。キッチンお借りしてもいいですか?」
「あぁ、悪いな」

二人の話を聞いてはいけないような雰囲気が漂っていたのでそばには居づらくて、昴さんに声をかけてからそっとその場を離れた。キッチンで子どもたちのお茶とお菓子を準備しながら考えるのは、やっぱり秀一さんのこと。
子どもたちと親しげな姿は正直意外だった。それと同時に新たな一面を知れたことにうれしさがこみ上げる。もっと知りたい。いろいろな秀一さんを。きっとまだまだ知らないことばかりだと思うから。


お茶とお菓子を子どもたちのところへ運んでいくと、三人ともそれぞれの言葉遣いで「ありがとう」と伝えてくれた。小学一年生とは思えないほどしっかりした子たちだ。

「名前お姉さんはここね!」
「私もいいの?」
「はい、もちろんです!」
「一緒に食おうぜ」
「ありがとう」

女の子が声をかけてくれて、さらに男の子二人も歓迎してくれているようなので私も子どもたちの輪に入ることにした。

元太くん、光彦くん、歩美ちゃん。そしてコナンくんと、隣の阿笠博士の家に住む哀ちゃんという女の子。子どもたちは五人で少年探偵団≠ニいうものを結成しているそうだ。
ただのごっこ遊びかと思いきや、学校で依頼を受けたり実際に起きた様々な事件の捜査協力をしたりと結構本格的に活動しているらしい。警視庁の刑事さんとも顔見知りのようだ。

コナンくんが昴さんと話をしている間に三人がいろいろ話してくれたので、感心してつい聞き入ってしまった。自分がどんな小学生時代を過ごしていたのかと聞かれるとあまり覚えていないのだけれど、少なくともこの子たちほど絆の強い友達はいなかった。だからこの子たちを羨ましくも思う。

「私も何かあったら少年探偵団に依頼しようかな」
「ほんと!?」
「何でも言ってくれよな!」
「ボクたちに任せてください!」

目をキラキラと輝かせる三人が本当に可愛くて、自然と笑みがこぼれた。これが母性本能をくすぐられる、ということなのかもしれない。私にも母性というものが備わっていたみたいだ。

「オメーら、あんまり名前さんに迷惑かけるんじゃねーぞ」
「あ! コナンくん!」

割り込んだ声に歩美ちゃんが勢いよく振り返る。話を終えたであろうコナンくんと昴さんがこちらにやってきた。

「昴さんとの話はもう終わったんですか?」
「あぁ」
「じゃあ博士んち戻ろうぜ! カレーできたってよ」
「そうだな。昴さんと名前さん、急に来ちゃってごめんね」

話が終わったと分かった瞬間、子どもたちは一斉に立ち上がって帰り支度を始めた。話している途中に出来上がったというカレーがよほど楽しみなのかもしれない。

「ボウヤが気にすることはない」
「あの子たちと話せて楽しかったよ。こちらこそ、変に気を遣わせちゃってごめんね」
「ううん、全然。アイツら待ってるみたいだから、ボクもう行くね」

早々に帰り支度を済ませた子どもたちはいつの間にか玄関に移動していたようで、口々にコナンくんを呼ぶ声が聞こえる。コナンくんが部屋を出たときに見送りもかねて昴さんと一緒に玄関に行くと、子どもたちは手を振りながら仲良く帰っていった。




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