切島くんは知ってる


俺が鈴木あおいのことを知ったのは中学二年の頃だった。

俺はこの時から活躍するヒーローになりたいがために雄英高校への受験を考えていた。進路希望面談で担任にその事を話したときにあおいの名前がでてきた。

「じゃあ、最終的な進路は雄英のヒーロー科でいいんだな」

「はい!そのつもりです!」

「じゃ本校で雄英のヒーロー科志望するのはこれで二人って訳か。」

「二人?あと一人って誰すか?」


正直、ここからの受験者は俺だけだと思ってた。他の高校のヒーロー科を受ける生徒はたくさんいるけど雄英は倍率も高いし個性もそれなりのものじゃないと先生たちも受けさせてはくれなかった。

「二組の鈴木あおいだよ。知らないのか?お前」

「いや〜わかんないっす」

「珍しいな。まぁ教師の俺じゃ言えないこともあるし友達からでも聞け」

担任はそれ以上その子のことを言うことはなかったけど、自分以外に雄英を受けることを認められた子に興味がふつふつと湧いてきた。









「なぁ、二組の鈴木あおいって子知ってる?」

結局胸にモヤモヤしたものを払えきれずに友達に朝一番で聞くと友達は目を丸くして俺を見た。

「なに、お前鈴木さん気になるの?」

「いや、そういう訳じゃねーけど。雄英受けるらしいんだよ」

「へ〜、初耳だけど。まぁあの個性だもん受かるわな」

「そんなすげぇ個性なのか?」

「すげぇっつーか、怖いっつーか。あ、噂をすればだよ」


友達が目線で示した先を見ると女の子が一人こちらに歩いてきていた。
あの子が鈴木あおい。身長は小さめだけど顔は綺麗系な女の子だった。ただ雰囲気が憂いを帯びていて他の女子とは少し違ってみえた。

「可愛いよな。切島あぁいう子タイプだろ」

「うるせーわ。でも見た感じ普通の子だな」

「見た感じ、はな。」

友達はそこで話を止めた。鈴木あおいが目の前を通り過ぎていく。視線はやや下向きでこちらなんて見向きもしなかった。

「で、個性はなんなんだよ」

「右手は確かどんな重症な怪我でも触れば治っちまうってやつだった」

「結構普通じゃね?」

「いや左手が問題なんだよ」

そこまで言うと周りをキョロキョロし始めた。人はそれなりにいるけど俺らの会話聞いてるやつなんていないと思うけどな。

「早く言えよ」

「不謹慎だからあんま鈴木の左手の話はあんまりみんなしないんだよ」

「…そんなにか?」

「あぁ。だからお前もあんまり他の人に聞くなよ」

「あ、あぁ。」




「鈴木あおいの左手の個性は殺傷記憶って言っていうんだ」

「さっしょう…?」


友達の話ではこうだった。
右手でけが人の治したい部分に触れる。そうするとけがはみるみるうちに消えてあっという間になにもない状態になる。側から見れば有能な個性だが、実は右手でけがを消しているのではなく吸い込んでいる、に近いという。
そして右手で吸い込んだ怪我の痛さを左手が記憶する。

記憶した痛みはけが人の顔を思い出せば自由に人に移すことも可能だし攻撃としての能力でもチート過ぎるほどだ。
発動条件としては左手を地面につけてけが人の顔を思い出し、攻撃したい相手の目を見る。それだけだった。



「なんだそれめっちゃつえーじゃん」

「チート能力だな。でも鈴木の左手の個性使っているところしばらく見ていないって噂だよ」

「なんでだ?」



「鈴木、個性がまだコントロールできないくらいの歳にな。誤って左手の個性で母親殺したらしいんだ」

「は…まじ?」

「あぁ。その前の日くらいに事故に遭った瀕死の人助けたらしいんだわ」

「小さいから右手で吸い込んでたの、気づいてなかったのか」

「そうそう、それで知らずの間に母親に左手の個性使っちゃったらしいよ」


頭を思いっきり殴られたようなショック感があった。確かに俺も個性をコントロール出来なかった時目を傷つけたことはあったけど、そんなもん比べもんにならないような事だ。

始業ベルがなり友達が席に戻った後でも頭の中にあるのは鈴木あおいの事ばかりだった。