「残念ながら、煎じるのは私である。......脱狼薬についての研究はここ十年ほどで大きく進んだが、人狼たちから必要とされなかったためーー失礼、比較的高価な材料と複雑な調合方法、高度な技術が不可欠で人狼たちは手に入れることができなかったため、その内容はほとんど世の中に出回らなかった」
スネイプは、“残念ながら”を強調してひと息に話しきった。そしてもう一度“残念ながら”を強調して続けた。
「よって、残念ながら、研究所で新しい調合方法等について一週間の研修を受けなければならなかった。未だ完璧でない魔法薬を使用することは危険を伴う。ルーピン教授にはこれを」
「セブルスは前置きが長いのう!」
スネイプの話しかたに圧倒されていた私は、ああ、とかはい、とか言いながら突き出された羊皮紙を受け取った。身長、体重、変身時の特徴、などなど。
「えっと、これは調合に関係があるのかな?」
「さよう、できれば今、すぐに、記入していただきたいのだが」
輝く完璧な笑顔のダンブルドアと、引きつった笑みの私と、表情のぴくりとも動かないスネイプ。私はだんだん九月が不安になってきて、そそくさと退出した。すると後ろからスネイプの不機嫌そうな声が追いかけてきた。
「八月は満月の前後一週間をホグワーツで過ごすように!」
私は帰宅して間もなく家の古びたベッドに入り、先ほどの出来事が夢であるようにと願いながら目を閉じた。気を張っていたのか、眠りはすぐに訪れた。
しかし朝目覚めたとき、記憶はしっかり刻まれていた。頬を抓ると痛みを感じた。背筋がぞくりとした。そして十年と少し前に似た絶望が私を襲った。私は絶望し、それと同時に恐怖していた。
当然だ。
私がまだ生徒だったころ、殺しかけてしまった誰か、というのは、セブルス・スネイプその人だったのだから。