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一回めの引越しをしてからも、たまにいつもと違う部屋で寝ないといけない日があった。ある日、自分のベッドではなくその部屋で目が覚めた。僕はびっくりして叫んだーー部屋の壁や床は何かで引っ掻いたような傷だらけ。ベッドのマットも引き裂かれて中身が飛び出ていたし、体のあちこちに、みみず腫れのような傷や、規則正しく並んだ浅い穴のような傷があったから。

僕の声に驚いてドアを開けた父さんと母さんに、寝ている間に何かが暴れたんだ、と言うと、ふたりは顔を見合わせてからもう一度僕を見て、父さんが口を開いた。
五歳の誕生日の少し前、僕が大きな怪我をしたとき。あれはただの怪我じゃなく、人狼に噛まれた傷だった。そして僕も人狼になってしまったんだ。満月の夜は変身してしまうから、ひとりでこの部屋にいなければいけない。


父さんは人狼について調べたことをいっぱい教えてくれた。人狼についての本も読ませてくれた。人狼はーーつまり僕は、危険で残忍、恐ろしい怪物だった。
それからはたまに恐ろしい夢を見た。狼に変身した僕が、人間を噛みちぎっている夢だった。そのあと空が白んできて、僕は人間の姿に戻れるんだけど、口周りや手が血だらけで、目の前には僕が襲った人間の、バラバラになった血まみれのかたまりがあって、絶望する夢。
友達が遊んでくれなくなったのも、隣の家のおばさんが家に来なくなったのも、引越しをしたのも、全部僕のせいだった。

父さんと母さんは、僕は何も悪くなくて、悪いのは僕を噛んだ人狼なんだって言ってくれたけれど、何回か引越しを繰り返して、山に囲まれた家でひっそりと暮らさないといけないのは他の何でもなく僕のせいだ。
でも、山に囲まれているから、満月の夜が明けても周りの目を気にしなくていいのはすごく楽だった。父さんは魔法を教えてくれたし、母さんはマグル式の料理や洗濯もできたほうがいいわと手伝わせてくれた。父さんも母さんもとっても優しくて、遊ぶ友達はいなかったけど辛くはなかった。

十一歳の誕生日、ダンブルドアが家に来て、ホグワーツの説明をしてくれた。人狼の僕が、他の子たちと同じように学校に行けると聞いてびっくりしたし嬉しかったけど、でもそんなの無理だとすぐに思った。ダンブルドアは僕のその気持ちを見透かしたように、ホグワーツで学べば、人狼であっても一人前の魔法使いになれること、先生方も安全に学校生活が送れるように助けてくれることを説明して帰っていった。
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