お客さんですかねぇ。

中間試験の答案を返却した日のお昼休み。

理事長先生の容赦ないやり方のおかげで全員が50位以内に入るという目標が達成されることはなかった。
次こそはと生徒の前で意気込みはしたものの、少なからず気落ちしているのは確かで。
ブルーな気分を明るくするために美味しいスイーツでも食べることにした。


(…どうせなら優雅に食べたいですねぇ)


旧校舎から少し離れた森の中に入り、木々の伐採を始める。
切り倒した木々でお洒落なテーブルと椅子を作り、その際に余った木材を地面に敷き詰めればお洒落なテラスが完成した。


(あとは紅茶とスイーツを準備して…)


お気に入りのお店に行って、一瞬で戻ってくる。

木々が生い茂る場所にお洒落な空間を作り上げ、満足しながら椅子に腰掛けた。
ティーカップに紅茶を注いで、ふーふーしながら冷めるのを待つこと数分。
漸く飲めるようになった紅茶をすすっていると、森の奥から人の気配を感じた。

…E組の生徒ではありませんねぇ。
だが、見知らぬ人物というわけでもなさそうだと私の鼻が言っています。

気配のする方を見やると、白い子兎…とこの学校の制服を着ている女の子が見えた。
この学校の生徒であることは確かだと思いますが…はて、何処で会ったのか。
女生徒はこちらに気づいていないようで、様子を窺うと少しだけ安堵しているように見える。


「…おやおや、お客さんですかねぇ」

「!!」


話しかけると、驚いたようにこちらを向いた女生徒は私の姿を見てぽかんとした表情をした。

…知っている気はするものの、見覚えがありませんねぇ。
記憶を辿りつつ、彼女をお茶会に誘ってみた。
白い子兎を抱いて恐る恐るこちらにやって来た女生徒に紅茶とケーキを差し出しながら簡単に自己紹介をした。


「私はE組で担任をしています」

「え…!…せ、先生…ですか?」

「はい。それで、貴女は?」

「…あ…A組の、浅野優良と言います」


ぺこりと頭を下げたA組の浅野……優良さん。


(……)


…どうやら彼女は理事長先生の娘さんだったようで。
なるほど…知っている気はするものの覚えがないのは、彼女自身とは初対面だけれど彼女の父親とは会ったことがあるからだったんですね…。
少し遠い目をしつつ納得する。


(…)


…いや、そんなことよりも!
あの理事長先生に娘がいたとは…。
しかも、あんまり似てない。

え…もしかして、勘違い…。
にゅやッ、私の鼻に間違いなどありません…!

念のため「貴女のお父さんはこの学校の理事長先生ですか?」と問えば、突然の話題チェンジに目をぱちくりさせてからこくりと頷かれた。

ほら、やっぱり間違いじゃない…!



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