E組に誘いましょう。

彼女と理事長先生はやはり親子だった。
…親子とはここまで似ないものなのでしょうか。

思うことは色々あるものの、考えても仕方がないので意識を目の前のケーキに移すことにした。
私のお気に入りのお店で買ったケーキ。
このケーキの中身には基本生クリームが使用されているのですが、なんと毎日数個限定でその中身がカスタードクリームになっているらしい。
とても美味しいと噂で聞いたので、是非食べてみたいのですが…ほとんど運任せなので当てるのが難しい。
今回もまとめていくつか購入してきたものの…。


(…はずれですねぇ)


ケーキを一口食べながら思う。
はずれと言っても、とても美味しいことに変わりはないのだけれど。
もぐもぐと食べていれば、優良さんも「いただきます」と言ってからケーキを一口分口に含んだ。


「…!とても、おいしい」

「そうでしょう。私のお気に入りのお店のケーキなんです」


幸せそうに笑った優良さんはやはり理事長先生とは似ても似つかない。


「中はカスタードのクリームなんですね」

「…!?!?」


そう言ってもう一口ケーキを食べる…優良…さん…。
ま…待って…!それは…!!


「数個限定の…!!!」

「?」


カスタードクリーム入りのケーキ…!!
何の事だか分からない優良さんはきょとんとしたまま、私を見つめた。

そ、それは、私が食べたいと思っていたケーキなんです…!!
優良さんにそう力説したら、快くケーキを分けてくれた。
なんて優しい…!
そして、なんて理事長先生に似てない…!!

涙ながらに念願のケーキをもぐもぐしていると、優良さんは少し可笑しそうに笑った。


「先生、大げさです」

「そんなことはありません…!」


このケーキのために一体いくら費やしたのやら。
それだけの価値はありましたねぇ。
思わず笑顔になる美味しさです。


「ふふふ」

「にゅやッ!そんなに可笑しいですか…!」

「あ…ごめんなさい」


優良さんは少し慌てた様子で謝ってから「そうじゃなくて…その…」と否定した。
何て言ったら良いのか考えているのか、言葉が途切れる。
暫くの沈黙の後「少し新鮮で」と少しだけ寂しそうに笑った。


「先生とこんなに親しくお話したことがあまりなかったので」


その後に小さく、お友達ともと呟く声が聞こえた。
その言葉が指す意味は簡単に理解できた。

彼女の父親はこの学校の理事長だ。
本校舎にいる教師達は彼女に気を使っている所もあるのでしょう。
それは同級生達にも言えることで、彼女がどんなに温和で優しい女の子だとしても、この学校にいる限りは一線を引かれてしまうのではないだろうか。

仲良くしたくても、踏み込めない。
この年頃の女の子なら…いいえ、そうでなくても寂しく思うのは当然のこと。


(…)


少し考える。
…そうですねぇ、せっかくの機会ですからE組に誘いましょう。
これから先、色んな子達が成長する上できっと必要で…大切になるはずですから。
そう結論が出たので、改めて自己紹介をすることにした。


「…先生、特に名乗るような名前はないのですが、生徒達からは殺せんせーと呼ばれています」


自分の中で勝手に話が完結してしまっているせいか、話が少し唐突過ぎたようだ。
優良さんは目をぱちくりさせた後「…ころせんせー?」と不思議そうに首を傾げた。

…どうやら唐突だったことよりも名前の方が気になった様子。
その疑問には後で答えるとして、一先ず話を先に進めすことにした。


「実は先生、月を爆破した張本人なんです」



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