…なんでしょう。

E組へ誘う理由を述べると、優良さんは少し俯いた。
彼女の膝で眠る白い子兎を撫でながら、何か考えている様子。
…そういえばその子兎、親元を離れるには少し幼い気がしますねぇ。


(…)


きっと親兎が探しているはず。
「少し待っていてください」と優良さんに告げてからマッハで森に入る。
そしてその子兎の家族と思しき兎達を連れて一瞬で戻って来た。


「!!……あっ」

「その子兎の家族です」


そう言いながら兎の一家を抱いて優良さんに近づく。


「……殺せんせー、うさぎ達がとても怯えています」

「にゅやッ!細心の注意を払ったのですが…!!」


連れてきた兎達は私の触手の中でふるふると震えていた。
マッハで連れて来たのがいけなかったのでしょうか…。
反省をしていると、私の触手から逃れるように兎達は地面に降りた。

そんなに嫌でしたか…!?
そんな兎達を見てショックを受ける。
こう見えて動物達には好かれやすいと思っていたんですが…。
落ち込む私を余所に兎達は優良さんの方へちょこちょこと駆けて行った。
…なんでしょう、この敗北感。

優良さんは近寄ってきた兎達のために椅子から降りて、床に座り込んだ。
兎達は心配そうに子兎に群がるものの、当の本人は家族に気づく様子もなく今だに夢の中。

…大分お疲れなのは、一人であっちこっち冒険していたからでしょうか。
この子兎の家族はここから少し離れた場所で見つけた。
子兎ならかなり遠くという表現になるでしょう。

心配そうな親兎とのほほんとしてる子兎を見て思う。


(……優良さんの場合、)


「少し家族から距離を取ってみた方が良いのかもしれませんねぇ」

「…殺せんせー?」

「いいえ、こちらの話です。……ただ、」


この子兎のように家族から離れて少し外へ出てみるのも良いかもしれないと思いまして。


「今までとは違う世界が見えるかもしれませんよ?」


私の言葉に優良さんは目をぱちくりさせた。
それから暫くして「…そう、ですね」と答えながらもう一度子兎を撫でた。

そこまで話した所で予鈴が遠くの方で鳴り響く。
もうすぐお昼休みが終わる。
「本校舎の近くまで送りましょう」と申し出れば丁重に断られてしまった。
理由は国家機密が本校舎に近づくのは良くないのではとのこと。

…既に集会時に訪問していたりするのですが。
そうは思ったものの、それは黙っておくことにした。
その代わり、兎達をお家に帰してあげてほしいと頼まれた。


「それくらいお安い御用です」

「…マッハ20はダメですよ?」

「……はい」


その返事に満足そうに笑うと優良さんは本校舎に戻るため歩き始めた。
だが、途中で歩みを止めてこちらを振り返った。


「?」

「あと…その……また、…これからよろしくお願いします」


そう言ってはにかむと優良さんは再びこちらに背を向けて歩き出した。

上手く説得できるといいですねぇ。



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