…それもそうだね。

新しく僕達E組のクラスにやってきたのは理事長の愛娘で次席を誇る浅野優良ちゃんだった。
成績優秀で、カルマ君のように素行が悪いわけでもない彼女が何故かこのクラスにやって来た。


「彼女もコイツの暗殺に加わることになった」


烏間先生は殺せんせーを指しながら僕達にそう言った。
詳しい事情は分からないけれど、殺せんせーが絡んでいることだけは確かだった。
…そして、理事長の怒りを買ってしまっていることも確かだった。


(…どう考えてもよろしくない状況だ)


これから先も、僕らは普通に過ごせるのだろうか…と思ったけれど、暗殺の標的が担任の時点で僕達の学校生活は普通じゃない。
それを思うと大したことではないのかもしれない。
とりあえず、この学校から追い出されないことを願いたいかな…切実に。
思わず苦笑を浮かべると、隣の席の茅野がひそひそと声をかけてきた。


「普通に良い子そうだよね……理事長に似てなくて」

「確かに……でも、理事長に似てたら間違いなくここにはいないよね」

「…それもそうだね」


「どんな子かなー」と呟く茅野を横目にもう一度浅野さんの方を向いた。
浅野さんと同じクラスになったことはないけれど、優秀で、良い子で、理事長の娘(前に愛が付く)くらいはこの学校に通っていれば皆知ってることだと思う。

そんなことを考えていると殺せんせーは僕達に向かって「皆さん仲良くしてください」と言い、浅野さんを一番後ろの空いている席へと促した。
その席は今日はまだ来ていないカルマ君の隣で、前には奥田さんが座っていた。

彼女が席に着いたのを確認すると「以上で朝のHRを終わります」と告げてから殺せんせーは教室を出て行った。
殺せんせーの一言でクラスは少しの休憩時間に入る。
普段ならば少しばかり騒がしくなる教室だけれど、今日は少し静かだ。
杉野が小声で声をかけてきたのに、その声は予想以上に教室に響いた。


(…何が原因かは考えなくても分かるけど)


さっき紹介された浅野さんだろう。
現に、クラスの大半が浅野さんを遠巻きに見ているのが窺える。
…まあ、僕もその一人なわけだけど。

その視線が居心地悪いのか、少しだけ困った顔の浅野さん。
そんな浅野さんに声をかけたのは意外にも奥田さんだった。

声をかけられた浅野さんは少し驚いた後、とても嬉しそうに笑った。
…理事長とは似ても似つかない表情だ。

杉野も思ったみたいで、僕の思ったことをぽつりと呟いた。
それを皮切りに、クラスの騒がしさが戻った。
1時間目は数学だったとか、終わりに簡単な小テストがあったよねとか。
そんなクラスメイト達の他愛無い会話が耳に入る。
杉野も「そういえばさー」と僕に話を振ってきたので、浅野さんから視線を外した。

ふんわりした雰囲気を纏う彼女は一体どんな暗殺をするのだろう。



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