…わ、分かりやすいな。

「ちょっと皆さん、班になってください」


社会の時間。
殺せんせーの一言でクラスメイト達が机を動かし始めた。


「速水さんと岡島くんは、どちらか磯貝くん達の班に入ってくださいね」


付け加えるようにそう告げた殺せんせー。
おそらく、浅野がこのクラスにやって来たことで班の人数に偏りが出たからだろう。
そう納得した速水と岡島は殺せんせーの言葉に頷いた。


「じゃあ、俺が…」

「私がこっちに行く」

「…!!!」


岡島が言うよりも先に、速水はこちらへ机を向けた。
速水が自己主張するなんて、珍しい。
しかも、かなり強引に。


「よろしく」

「!」


そう言って、速水は浅野に向かって挨拶をした。
速水の表情が少しだけ柔らかくなった気がする。


(…意外だ)


浅野と速水がお互いに自己紹介する中、岡島が俺も挨拶がしたかったと嘆いていたが、速水は気にも留めていなかった。
あ…、三村に励まされてる。

数学の時間、カルマとの会話があまりにも普通だったからか、クラスメイト達の中での浅野に対する印象は良好なものに変わったように見える。
まあ、父親が理事長なだけで彼女自身はオレ達と同い年の中学生なわけだし。
浅野自身がクラスに馴染もうと努力してるのは見ていれば分かるし。
そんな彼女に悪い印象は抱かないだろう。

そんなことを思っていると、浅野に挨拶された。
…どうやら速水との会話は終わったようだ。


「ああ、よろしく」


浅野と呼べば、少し寂しそうな表情をされた。
試しに優良ちゃんと呼んでみたら、凄く嬉しそうにされた。
…わ、分かりやすいな。

カルマとの会話を聞いてても思ったけど、相当分かりやすい娘だと改めて思った。
理事長なんか、あの笑顔の下に一体どれだけ腹黒いこと考えてんだと思うのにな。
純粋に嬉しそうな笑顔を浮かべる彼女とはあまりにも結び付かない。

そんなことを考えながら、目の前で会話をしている女子達を見る。
幸せそうなオーラを出しながら会話をする優良ちゃんはどう見ても分かりやすい。
そのオーラに釣られてか、奥田も速水も普段より表情が柔らかいように見える。

こういうのを人を和ませるというのだろうか。
ぼんやりとそんなことを思っていると突然目の前にプリントが現れた。
…どうやら、殺せんせーが置いていったようだ。
各班に1枚ずつ渡されたプリントを皆で覗き込むように見ていると、殺せんせーが「それでは早速、授業を始めましょう」と言った。

プリントには縦の鍵・横の鍵とどこかで見たことのある言葉が書かれていて、その下にはずらりと社会の問題が並ぶ。
裏を返すと思った通り、クロスワードの枠が、これまたびっしり描かれていた。


「班員と協力して解いてみてください」


注意事項として、教科書を見てはいけないとのこと。
代わりにヒントを用意したので、分からなかったらそちらを見るようにとのこと。


「できた班から休み時間に入ってもいいですよ」


そう言った後「まあ、時間一杯使わないと無理でしょうけどねぇ」とナメた表情でニヤニヤと笑った。
殺せんせーが暗殺以外でその表情をするのは少し珍しいなと思いながら、皆で問題を解きにかかった。

…この班、カルマと優良ちゃんがいる時点で百人力な気がするな。



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