…無駄に細かいな。
このクラス(E組)に新しくやって来た、理事長の娘である浅野優良。
さっき本人と顔を合わせてきたが、ふんわりした雰囲気の女子生徒だった。
…写真で見て思った通り、理事長とはあまり似ていないように思う。
そんなことを思い出しつつ、追加で受け取った書類に目を通すことにした。
まだ何かあるのかとページを捲ると、成績は極めて優秀である…から始まり、好きな食べ物やら嫌いな食べ物やら、好きな動物まで書かれていた。
(…無駄に細かいな)
その上長い。
追加で受け取った書類を見ながら、思わず心の中でツッコみたい。
この追加書類、必要あるのか?
先日貰った書類だけで十分な気がするのは、気のせいではないはず。
そうは思っても、目を通すだけ通しておかないと何かあった時に困る可能性があるので、仕方がない。
溜め息が漏れそうになるのを抑えて、書類を捲った。
…なんだ宝物って。
そこに"家族"と書かれているのは理事長が誘導したのか、それとも本人の意志か…。
どちらにしろ、どれだけ娘のことが好きなんだ、あの理事長…。
長々と自分の愛娘について書き記した後、先日口頭のみで伝えられた「娘に何かあったら追い出しますので」が正式な文章として明記されていた。
(…)
おそらく…いや、間違いなくメインはこちらだろう。
娘に何かあったらここから追い出すことを再度伝えるためにわざわざ追加の書類を作ったようだ。
…それにしたって、文章の比率が可笑しいと思うが。
あの長い前置き、必要ないだろう。
どれだけ娘が可愛いんだ…。
予想以上の親バカであることが発覚して、抑えていた溜め息が漏れた。
(…今日の体育はどうしたものか)
例え理事長の娘だとしても、このクラスに来た以上、必然的にあの黄色い超生物の暗殺に加わることになる。
ナイフ術や狙撃に関して、早い内に基礎は教えておきたい。
そのために、自立の授業と入れ替えてもらったわけだが…。
(とりあえず、銃の基礎が先か…)
ナイフよりも銃の基礎を先に教えた方が良いだろう。
普通の中学生は持ったことすらない代物だしな。
それに、書類によると苦手科目に体育と書かれている。
成績だけを見ると、とても苦手そうには見えないが、いきなりナイフ術を教えるよりも彼女の身体能力を見てからの方が良いだろう。
とりあえず、怪我だけはさせないよういつも以上に細心の注意を払わなければ…。
彼女の父親がいつ乗り込んで来るか分からない。
その場面が容易に想像できてしまい、再び溜め息が漏れた。
だからといって、こればかりに構ってるわけにもいかない。
やるべき仕事は山積みだ。
今日の授業内容を早々に決め、他に片付けるべき仕事へ作業を移した。
(…予想以上だな)
そして体育の時間。
たった数分で恐るべき射撃精度を見せたこの娘は間違いなくあの理事長の娘だと思った。
予定を変更し、ナイフ術も教えることにしたが、体育が苦手と言うわりにはセンスがあるし、運動神経も悪くない…というか、寧ろ良い方だろう。
何が苦手なのか、疑問で仕方がない。
「…体育は苦手じゃないのか?」
思わず疑問が声になってしまった。
それに対して、兄も父も凄いので…と困った表情でそんなことを言う彼女に比較対象が可笑しいとツッコませて欲しい。
…なるほど、これは完全に意識的な問題か。
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CrystalpalacE