…そこなんだ。

(…何でもできるなぁ)


体育の授業が終わり、家庭科の時間。
美味しそうな料理を作り上げた優良ちゃんを見ながら、ぼんやりと思う。
勉強も出来て、運動も出来て、料理上手。
容姿も性格も可愛らしい彼女は、本当に非の打ちどころがない。


(…同じ人間なのに、どうしてこうも違うんだろう)


少しだけ悲観的になっていると、優良ちゃんの所にいた茅野が美味しそうなプリンを片手にこちらへ戻って来た。


「むむむ…巨乳なのに…巨乳なのに…憎めない…」

「…そこなんだ」


プリンを口に含みながら、美味しいプリンと胸のサイズを天秤にかけている茅野に思わず苦笑いしてしまう。
茅野のそんな心境など知らず、優良ちゃんは奥田さん達と楽しそうに会話をしていた。


(馴染むのが早いなぁ)


まるで最初からこのクラスにいたみたいだ。
警戒心すら溶かしてしまう彼女の雰囲気のおかげ…なのもそうだけど、たぶん、優良ちゃんとお話してみたいと思ってた生徒が多かったんだと思う。

…少なからず、興味はあったと思うから。
あの理事長が愛でている娘がどんな子なのか、噂でしか聞いたことのない女の子。
しかも、このクラス(E組)では絶対に関わることはないだろうと思っていた存在。
実際に関わってみて、ふんわりした優しい子だと分かって、余計に話してみたくなった人は多いと思う。
だから、お話できて嬉しいのは優良ちゃんだけじゃなくて、クラスメイト達も同じじゃないかな。

それを優良ちゃんに伝えたら、彼女はとても嬉しそうに笑うのだろうか。
そんなことを思いつつ、調理実習で使った器具を片付けることにした。

調理が終わった班からそのままお昼休みにしても良いとのことで、作った料理と一緒に持参したお昼ご飯を並べていると、楽しそうな会話が聞こえてきた。


「楽しそうだな」

「うん」


杉野の言葉に頷きながら会話が聞こえてきた方を見る。
そこには優良ちゃんと、その周りに集まった女子達が楽しそうにお弁当を広げていた。


「…オレ、追い出されたんだけど」


茅野の座ってた席に座りながら、納得がいかないという表情でそう言ったカルマ君に苦笑いしてしまう。
どうやら、プリンか胸かを天秤にかけていた茅野はプリンの方に傾いたらしい。
カルマ君の座っていた席に座って、優良ちゃんと楽しそうにお話しているのが見える。

そんな茅野の方に意識を向けていたからか、少し騒がしい休み時間でも「わ、美味しそうなお弁当!」という茅野の声がはっきりと聞こえた。
…少し、声が大きかったのもあるかもしれないけど。

その後に、優良ちゃんの"手作り"やら"家族のお弁当作りが日課"やら途切れ途切れに会話が聞こえてきた。


(…)


家族ってことは理事長達のお弁当も優良ちゃんの手作りなんだ。
理事長がお弁当を食べてる所を想像してみたけど、あまりイメージが湧かなかった。

…うん、考えるのはやめよう。



*

[*prev] [next#]

[ back ]


CrystalpalacE