…何かあったのか。

「クラスに馴染めたようで良かったです」


そう言って、満足げにニヤついた暗殺の標的。
誰のことを言っているのかは聞くまでもない。
新しくこのクラスにやって来た理事長の娘のことだろう。


「社会の授業を班活動にして正解でした」


一人で満足そうに頷いている姿から、俺に話しかけているというよりは独り言に近いのか。


「どうでしたか?烏間先生」


「良い子だったでしょう?」と聞いてきたコイツに「そうだな」と返せば「そうでしょう!!良い子なんです!!!」と力説してきた。
…何故お前が自慢する?
お前の娘じゃないだろ。


「鬱陶しい」

「にゅやッ!」


顔を近づけて無駄に熱く語ってくるコイツをパソコンの前から退かす。
俺は今、仕事中だ。
邪魔をするんじゃない。


「ぅぅ…、本当に良い子なんですよ…」


そんなことを呟きながら教員室の隅で落ち込む超生物を放置し、仕事を再開する。
お前のせいで俺の仕事が増えたんだ。
構ってる暇はない。

それから暫くして、英語の授業を終えたイリーナが教員室へ戻って来た。
自分の席に着きながら、いつもより真剣な表情で俺に話しかけてくる。


「あの理事長の娘さん…」

「…何かあったのか」


転入初日にしてトラブルかと身構えたら「色々教えたら、凄腕のハニートラップの使い手になれるわ」と言ってきた。
…真面目な顔して何を言い出すかと思えば!


「お前は理事長の愛娘に一体何を教える気だ…!!」

「ただの女の嗜みよ…!身に付けたって損じゃないわ!」


「優良なら男の一人二人すぐに落とせるようになるわよ」と続けるイリーナに溜め息が出る。
そんなことしたら、怒られるぞ。

その溜め息を何と勘違いしたのか、イリーナは愛娘の可能性について語り出した。
多才だし、容姿も良いし、何より警戒心を簡単に解いちゃう雰囲気…って、お前も語るのか。

呆れて聞いていると「それに、キスした時の優良の表情が…」と言葉を続けたイリーナに吃驚する。
キス…だと…。
もともと際どい授業をしていることは知っていたが、お前、本当に怒られるぞ、理事長に。

再び溜め息が零れる。
理事長の愛娘があらぬ方向へ導かれないように気を付けなければ。
そんなことを思いながら「変なことは教えるなよ」とイリーナに釘を刺してから仕事を再開した。

…それにしても、仕事が一向に減らないのは何故だ。



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CrystalpalacE