…また忘れてきたのか。
無事に旧校舎までたどり着けただろうか。
そう思って、優良に持たせているスマホの位置を確認した所、表示された場所は自宅だった。
…また忘れてきたのか。
あまり使用しないためか、度々自宅に置き去りにされる優良の携帯。
何かあったら大変だからと持ち歩くように言ったのだが「?学校に行くだけだよ」と不思議そうに首を傾げた優良にどう説明しようか迷った。
確かに、学校へ行くだけだ。
困ったことがあれば、近くに学秀もいるだろう。
…そういう問題ではなく、登下校時に何かあったらということを考えて言っているのだが、こっそり備えつけてあるGPS機能について説明するわけにもいかず。
結果、できるだけ持ち歩くようにということになったわけだが…、これでは何のために持たせているか分からない。
思わず溜め息が零れた。
そんなことを考えていると、扉をノックする音が聞こえた。
…誰かなど考えるまでもなく、間違いなく学秀だろう。
彼は私の返事も待たずに、扉を開けてずかずかと部屋の中へと入って来た。
乗り込んできて早々にどういうことかと聞いてくるものだから、誤魔化すように答えれば睨みつけられた。
(…まあ、嘘だと分かっているから私の所まで来たのだろう)
わざとらしく溜め息をつきながら、優良が望んだことだと素直に告げれば学秀は不満そうな顔をして「…優良から聞いていません」と言ってきた。
それに対して「優良が君に何でも話すと思っているのかい?」と挑発すれば、見るからに不機嫌になった。
…今の言い方は少し誤ったかもしれない。
これでは矛先が優良の方へ向きそうだ。
そうは思ったものの、仕方がない。
少しは情報を与えないと彼は絶対に引かないだろう。
思惑通り「もうすぐ授業が始まる時間だ」と言えば、学秀は大人しく引き下がった。
その姿を見つめながら、考える。
…あの様子からして、早急に優良と連絡を取りたいといった所か。
だが、残念なことに優良のスマホは自宅に置きっぱなしである。
自宅にあっては、どんなに連絡しても優良が出ることはない。
…優良と連絡が取れそうもないと判断したら、優良に会うために旧校舎へ行きそうだ。
学秀に旧校舎へ行かれては、優良に口止めした意味がない。
(念のため、何かしておくべきか)
旧校舎までの距離とかかる時間からして、昼休みさえ学秀の行動を制限しておけば問題はないだろう。
…生徒会か何か、仕事でも与えておけば良いだろうか。
そこへタイミング良くやって来た教頭の飯山先生に「昼休み中、浅野君を拘束しておけそうな仕事を彼に与えてください」と依頼しておいた。
これで、学秀が旧校舎へ近づく時間はないだろう。
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