…幸せだけど。

普段なら、くすぐれば割と簡単に白状する優良が、珍しく口を割らなかった。
瞳を潤ませて、やめてと訴える姿に僕の方が耐えられそうになくて、くすぐるのをやめた。

他の方法を試そうかとも思ったけど、執拗に追及して嫌われるのだけは避けたい。
仕方なく解放すると、優良はほっとした表情を見せた。

その後は、僕が「もう聞かない」と言ったからか、優良は至って普通に過ごしていた。

お風呂を済ませ、自室に戻る。
優良から聞くことを諦めたのは良いが、どうやって隠し事を探ろうか…。
あれこれ思案していると、部屋のドアがノックされた。
それから控えめに「秀くん…?」と愛称が呼ばれる。

ドアを開ければ、思った通り、お気に入りのぬいぐるみと一緒に優良の姿があった。
忙しいかな…?一緒に寝てもいいかな…?と控えめに窺う優良に「おいで」と誘えば、ぎゅっと僕へ抱きついてきた。
そんな優良の頭を優しく撫でると、小さく「ごめんなさい」と聞こえた気がした。

言えない理由があることは分かっている。
それを優良が気にしていることも察している。
無理に聞き出そうとすれば、優良は僕の所へ寄り付かなくなるのだろう。
優良に避けられたら、きっと耐えられない。

謝罪の言葉は聞こえなかった振りをして、優良を部屋の中へと招き入れた。
ベッドまで行き、優良のために常備された枕を僕の枕の横に置けば、何故か優良は僕の枕に顔を埋めた。


「秀くんの匂いがする…」


幸せそうにそう呟くが、本人が目の前にいるのに何故枕なんだ。
…少しだけ納得がいかない。


「…優良と同じシャンプーだろ」

「でも、秀くんの匂いだよ…」


ふにゃりとそう言った優良の頭を撫でる。
うとうとしている優良には何を言っても、意味をなさないのだろう。
だとしても、その無防備な姿は如何なものか。


(…今更か)


安心しきっている優良の姿にほんの少しのもやもやを感じて、小さくため息が漏れる。
…、…兄妹なのだから、仕方がない。
部屋の電気を消すために少しだけ優良から離れた。

照明を落として、優良の眠るベッドへ潜り込む。
優良が使うはずだった枕に頭を乗せれば、微かに優良の匂いがした。
そんなことをぼんやり思っていると、優良がぎゅっと抱きついてきた。

…僕から離れたことを、少しは寂しいと思ってくれているのだろうか。
そうだと嬉しいと勝手に都合の良い方へ解釈してしまう。
そんな僕の心境も知らずに、すやすやと穏やかな寝息を立て始めた優良の額に口付けて、僕も瞳を閉じた。

…幸せだけど、きっと、長くは続かない。



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CrystalpalacE