修学旅行は始まったばかり。

理事長の驚愕事実を掘り起こしてしまってから、しばらく。
ようやく新幹線へと乗り込むことになったわけなんだけど…。


「ごきげんよう、生徒達」


そんな僕達の目の前に現れたのは、どう見ても修学旅行の引率者とは思えないカッコをしたビッチ先生だった。


「…何だよ、ビッチ先生」


「そのハリウッドセレブみたいなカッコ」というコメントに対して、ビッチ先生は「良い女は旅ファッションにこそ気を遣うのよ」と不敵に笑った。

…笑っていたのだが、そこへやって来た烏間先生が「目立ちすぎだ、着替えろ」と凄んだことにより、新幹線が出発する頃には座席でしくしくと泣いていた。
目立たない服が寝巻しかなかったみたいで、寝巻姿で落ち込んでいるビッチ先生に「誰が引率だか分からん」と呆れた声が聞こえた。


「イリーナ先生…?」


そんなビッチ先生の正面に座っている優良ちゃんが心配そうにしているのが見える。
「ほっといて大丈夫だ」と烏間先生が声をかけていた。

修学旅行前に一悶着あった新幹線の座席については、優良ちゃんが先生達と一緒の席ということで決着した。
…まあ、優良ちゃんの隣は烏間先生になったわけだけど。
配慮として、優良ちゃんと通路を挟んだ隣側に僕達の座席が割り振られた。

通路の反対側で行われているやりとりに苦笑いしていると、茅野が席から立ち上がって「優良ちゃん」と名前を呼んだ。
そして、ビッチ先生を励ましている優良ちゃんに「一緒にトランプしようよ!」と声をかけた。


「え…、でも…」


ビッチ先生の方を見て、困った表情を見せた優良ちゃんに「ビッチ先生ならほっといても大丈夫だよ」と言って、優良ちゃんの腕を引っ張ると席から立たせた。

烏間先生と同じことを言われて、さっきまで落ち込んでいたビッチ先生が「ちょっと…!」と声を上げる。
ビッチ先生が引き止める中、烏間先生に見送られて優良ちゃんは僕達の所へやって来た。
…といっても、隣なんだけどね。


「これをしまって…」


座席を区切る手すりをしまうと、優良ちゃんを座らせてから詰めるように茅野も座った。
「これでみんなでトランプできるよ!」と茅野がにこにこしながら言えば、優良ちゃんは目をぱちくりさせた後、嬉しそうに笑った。

修学旅行はまだ始まったばかりだ。



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