…旅行と全然関係ないけど。

新幹線に乗り損ねた殺せんせーが窓に張り付いてきたり、優良ちゃんのスマホに届いた"楽しんでおいで(^^)"というメッセージが理事長からのものだったり…。
まだ始まったばかりだというのに、驚いてばかりだ。


(…旅行と全然関係ないけど)


それでも「旅行になるとみんなのちょっと意外な面が見れるね」という茅野の言葉に、この驚きも修学旅行ならではなのかもしれないと思った。

新幹線を降りて、観光バスで京都市内を見て回れば、あっという間に夕方だ。


「にゅゃ…」


僕達E組が泊まる古びた旅館。
そのロビーで、ソファーにぐったりと沈んだ殺せんせーへと呆れた眼差しが向けられる。
どうやら新幹線とバスで酔ったみたいだ。
そんな殺せんせーに休んできたらと勧めながらもナイフを突き刺す学級委員コンビに思わず苦笑いが漏れた。

一度東京に戻るとか戻らないとかの会話を軽く聞き流していると「見つかった?」という茅野の声を拾った。
「どうかしたの?」と尋ねてみれば、神崎さんが独自にまとめていた日程表が見当たらないみたいだ。


「神崎さんは真面目ですからねぇ」


殺せんせーは真っ青な顔色で関心しながらも「これを持てば全て安心」と自分が作った分厚いしおりを勧めてきた。


「「それ持って歩きたくないからまとめてんだよ!!」」


…うん、ちょっと荷物だよね。
そのしおりを律儀に持ってきてる人なんて、少数だと思う。

そんなことを思いながら殺せんせーから神崎さんへと視線を戻す。
「…どこかで落としたのかなぁ」と呟く神崎さんに杉野が優良ちゃんを連れてきて例のしおりをおすすめしてた…。
確かに、僕達の回るコースを網羅している優良ちゃんのしおりなら、まとめ直すのに便利かもしれない。


「にゅやッ!?!?」

「…どうしたんだよ、殺せんせー」


唐突に奇声を上げた殺せんせーに今度は何だと視線が行く。
だけど、殺せんせーの視線は優良ちゃんの手元…そう、表紙だけそのままの、中身別物な優良ちゃんのしおり。


「優良さん…!そのしおりはどうしたんですか…!!」


優良ちゃんからしおりを受け取るとぱらぱらめくっては再び叫んだ。


「先生が…!!下調べまでした、おすすめデートスポットが…!」

「…そんなのが書いてあったのか」

「おすすめスイーツ100選も…!」


しくしく落ち込み始めた殺せんせーに申し訳なさそうに謝る優良ちゃん。
…いや、優良ちゃんは悪くないよ。

理事長によって改変されたことを話せば、みんながしおりを覗き込む。


「「すげー…」」


「これ、全部回るところかよ?」と聞いてきた前原君に頷けば、しばらくの沈黙の後、ページをめくる音がした。


「…いやいや、こえーよ!」


「どうなってんだ、あの理事長…!」というツッコみに優良ちゃんが不思議そうに首を傾げるものだから僕も一緒になって「さ、さあ…?」と首を傾げた。

きっと知らない方がいいと思う。



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CrystalpalacE