おかげで少し落ち着いた。

「…!…くん!渚君!」


誰かに名前を呼ばれて、意識が戻る。
…奥田さん?


「み、皆さん、大丈夫ですか…!?」

「…良かった、奥田さんは無事だったんだね」


僕の言葉に「ごめんなさい、思いっきり隠れてました」と返す奥田さん。
…なるほど、優良ちゃんが突然姿を現したのも、隠れていたからか。
そう納得していると「それが正しいよ」とカルマ君の声がした。


「犯罪慣れしてやがるよ、あいつ等」


「通報してもすぐには見つからないだろうね」と続けるとそのまま「オレに直接処刑させて欲しいんだけど」と言ってきた。


「…」


旅にトラブルはつきものとはいえ、あまりにも大きすぎる…。
僕達だけでどうにか出来るとは……ん?
視界に入ったのは殺せんせー特製の分厚いしおり。


「班員が拉致られた時…って」


「ここまで想定したしおりなんて見たことねーぞ」と呟く杉野に苦笑いが漏れる。
殺せんせー、おそろしくマメだからね…でも。


「おかげで少し落ち着いた」


今すべきことが、ちゃんと書いてある。


「殺せんせーに連絡してから、優良ちゃん達を助けに行こう」


しおりに書かれたアドバイスを参考に、優良ちゃん達がいるであろう場所を特定して足早に向かった。

たどり着いた先は廃墟の建物。
中は薄暗い。
奥へと進むと、優良ちゃん達を攫った人達の仲間と思われる高校生を発見した。


(ここで間違いなさそうだ)


どうしようかと相談するまでも無く、バキボキドカッとカルマ君が容赦なく叩きのめす。
そのまま近くにあった扉を開けると、やっぱり優良ちゃん達がいた。


「…皆!!」


僕達が現れたことに驚いた高校生達に、殺せんせー特製のしおりに書かれた拉致対策を紹介すれば「ねーよ、そんなしおり!!」と返ってきた気がした。
…うん、まあ普通はないよね。
「…で、どーすんの?お兄さん等」とカルマ君の雰囲気が怒気を帯びたものへと変わる。


「こんだけの事してくれたんだ」


「あんた等の修学旅行は、この後全部入院だよ」と言ってのけるカルマ君にリーダー格の高校生は不敵に笑った。
背後から複数の足音が聞こえてくる。


「呼んどいたツレ共だ」

「「「「…!!」」」」

「おまえらみたいな良い子ちゃんはな、見た事も無い不良共だ」


扉から入って来る人達に身構えていたけれど、入って来たのは不良らしからぬ姿をした高校生達と何故か黒子みたいな顔隠しをしている殺せんせーだった。


「不良などいませんねぇ。先生が全員手入れしてしまったので」

「殺せんせー!!」


殺せんせーは僕達の所へやって来ると遅くなってしまった謝罪と分厚いしおりを各自に渡してきた。
なんでも「渚君がしおりを持っていてくれたから、先生にも迅速に連絡できたのです」とのことだ。


「この機会に全員ちゃんと持ちましょう」


そう言って、さりげなく優良ちゃんのしおりをすり替えていた。

あ…やっぱり気にしてたんだ。



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