渡す。

寝室に入った所でドアがノックされた。
学秀かと思って、あしらおうとしたら「…お父様?」と優良の声がして、少し驚く。

すでに寝ていると思っていたのだが…。
そんなことを考えながらドアを開ければ、やはり優良の姿があった。


「…まだ起きていたのか」


部屋の中へ招き入れながらどうかしたのかと問えば、いつもありがとうの言葉と共にお洒落にラッピングされた小箱が差し出された。


(…そうか、今日は父の日だったか)


「ありがとう」とお礼の言葉を返しながらプレゼントを受け取れば、優良は嬉しそうに笑った。
プレゼントを渡し終えるとすぐに「おやすみなさい」と言って、部屋を出ようとする優良を引き止めて、 二人でベッドに腰かけた。


「ネクタイか…」

「はい!」


優良と並んで座りながら、プレゼントを開ける。
先週の日曜日に学秀と一緒に選んできたらしい。
表情をくるくると変えながら、その時のことを話す優良は大変可愛らしいが…。
…せっかく二人っきりだというのに、他の男の話とは関心しないな。


「…?」


隣に座る優良を抱き上げて、向い合せに膝の上に座らせる。
不思議そうに首を傾げている優良の頭を撫でながら、ネクタイを結んでくれるよう頼めば、優良は目をぱちくりさせた後、こくりと頷いてくれた。

ネクタイを結びやすいように上着を脱ぐと、優良の手が今つけているネクタイをするりと解いた。
ネクタイを外すと、優良の手が再び襟元に伸びてきて。
ネクタイを通しやすいように襟を立てて、そこに新しいネクタイがかけられた。


「あ、あれ…??」


自分のネクタイを結ぶのとは要領が異なるためか、苦戦しているようだ。
…そんな姿も愛らしい。
優良の動作の一つ一つが愛くるしくて、思わず口元が緩む。
解いて、結んでみて、また解いてを繰り返す優良の手を持って、結ぶ手伝いをしてあげる。


「あ…」


なんとか結ぶことができたようで、優良は「できました…!」と嬉しそうに笑った。
そのまま、ネクタイを首元まで締めるために優良は両手をネクタイへと添えた。


「…?」


そんな可愛らしい娘に愛しさが募って。
ネクタイに添えられた優良の両手を左手で撫でるように触れると、ネクタイと一緒に両手首をやんわりと掴んだ。
不思議そうに私の顔を見つめる優良に笑いかけてから、触れるだけのキスを唇に送った。


「…!!」


目を丸くして驚いている優良と目が合う。
恥ずかしくなったのか、その瞳はすぐに閉じられてしまったけれど。
触れていた唇を離せば、優良は恐る恐る目を開けてくれたものの、思っていたよりも近い位置に顔があったためか、恥ずかしそうに俯いてしまった。


(…ああ、本当に)


愛おしくて、可愛らしくて、優良を抱き寄せてそのままベッドへ沈んだ。
必然的に優良が私の上に乗る体勢になる。
そのことに驚いている優良を余所に、今度は額に口付けた。

もぞもぞと慌て始める優良に笑みが浮かぶ。
どうやら危機を察知したようだが、残念ながら今更だ。


「ま、待って、お父様…!」


「秀くんが待ってるの…」と言い出した優良の背筋をすっーと撫で上げれば、可愛らしい悲鳴と共に大人しくなった。
俯いてしまった優良に顔を上げるよう耳元で囁いても、首を横に振るだけで一向にこちらを向いてくれない。


「優良…」

「あっ…」


もう一度口付けようとこちらに顔を向かせた所で無遠慮にドアが開いた。
確認するまでもなく、学秀だろう。
大方、一人でプレゼントを渡しに行かせたものの、戻ってくるのが遅くて心配になったといったところか。

学秀は優良の名前を呼ぶと、こちらに駆けてきて優良を私から引き離した。
面白いくらい威嚇してくる我が息子は無視して、優良に「大切に使わせてもらうよ」とだけ伝えてシャワーを浴びるために脱衣室へと向かった。

この続きは、またの機会にしようか。



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