…言いたいことは分かってる

赤羽のせいで王女を攫った男が気絶してしまったため、詳細を聞き出すことが出来なくなった。
…とりあえず、王女の命が狙われていることだけは確かなようだが。

これからの行動についてどうすべきかと思案していると赤羽が『ホテルに戻るより、大使館まで逃げたら?その方がきっと楽しいよ』と言い出した。
それを聞いた王女が『名案ね!』と頷くものだから、慌てて反対するものの聞く耳を持たず、結局E組連中と大使館まで行くことになってしまった。


(…)


さっきから余計なことしかしない赤羽に苛立ちが増すのを抑え、スマホを取り出す。
いい加減連絡を入れないと流石にまずい。
そう思って理事長へ電話を入れるとワンコールもせずに出た。


「浅野君、連絡を待っていたところだよ」


間髪入れずに声が聞こえて来たと思えば、そのまま「王女と行方不明になったと聞いているのだが、まったく報告がないのはどういうことかな」と嫌味ったらしく聞いてきた。
…報告しなければならないことが沢山あることは重々承知しているが、今はそれどころではない。
「詳しくは後でお話ししますが、」と一言前置きして本題へと入った。


「王女が暗殺者に狙われて、居合わせたE組の連中と阻止したところです」

「…E組?」


"E組"と聞き返してきた理事長に、しまったと顔が引きつる。
この人は優良のことになると普段の数倍は勘が鋭くなるから、もっと言葉を濁すべきだった。
案の定、しばらくの沈黙の後「まさか、優良も一緒じゃないだろうね?」と疑問符は付いているが、ほとんど確信している声色で返ってきた。


「…」

「…まあいい。迎えを寄こすから場所を言いなさい」

「…僕もそのつもりでいたのですが、」


王女を大使館まで送り届けることになったと伝えれば、無言の圧力をかけられた。
…言いたいことは分かってる。
絶対優良のことだ。
王女が狙われている以上、優良を長いこと王女の近くに置いておくのは危険だ。
だからと言って、こんな所に一人置いていくわけにもいかない。
そうなると、優良も一緒に大使館へ行くことになってしまうわけで…。


「…状況判断ができる知性くらいは持ち合わせていると思ったが、私の思い違いだったかな?」


刺々しい物言いに「ちゃんと守ります」とだけ吐き捨てて、一方的に電話を切った。



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