…もうそろそろ来るはず
先回りした駅のロータリー。
駅に一番近いバス停のベンチに前原と優良ちゃんと一緒に腰掛ける。
辺りを注意深く観察していると、前原がいつもの調子で「オレ達、周りからどう見えてんのかなー?」と笑った。
「優良ちゃん、両手にイケメンだぜ?きっと、羨ましがら…」
「はいはい、自分で言わない」
緊張感のかけらもないことを言い出した前原に思わず溜息が出る。
そんなオレ達のやり取りを見て、くすくす笑う優良ちゃんも、状況に似合わずとても楽しそうだ。
「エスコートを任された僕が王女から離れるわけにはいかない。だからと言って、狙われてる王女の近くに優良を置いておくわけにもいかない」と浅野兄に頼まれて、優良ちゃんの安全を確保しつつ周りに気を配っているオレに対して、前原は本当にマイペースだった。
「おおー、エサもないのにハトが寄ってくるとか、流石優良ちゃん」
オレ達の後ろではスナック菓子をばら撒いてハトを集める渚と茅野。
これ、優良ちゃんを置いておけばエサいらずなんじゃ…と目の前をうろうろしている数羽のハトを眺める。
「…なんか、可哀想なことになってるな」
「だ、大丈夫でしょうか…」
前原達の言葉につられて再び後ろを向けば、さっきとは違った景色が映る。
大量にばら撒いたエサに反応してハト達が渚達の所へ集まっているのは変わらないが、エサをあげてる可愛い絵面ではなく、次から次へと集まるハトに襲われてる可哀想なものだった。
…もうそろそろバスが来るはずだから、渚達にはもう少し頑張ってもらうしかない。
駅前の時計を確認して、優良ちゃん達に声をかけた。
すると、王女様達を乗せていると思われるバスがやって来るのを確認する。
ロータリーにやって来て、時刻通り停車した。
乗客が降りて行くのを横目に怪しい動きをしている人がいないかもう一度観察する。
「ぁ…」
優良ちゃんの声に反応するように前原が「アイツ…!」と立ち上がった。
乗車列に並んでた黒いコートを纏った男が、ごく自然に列を離れた。
自然に離れたけど、向かう先は降車してる乗客の方。
しかも、手には注射器が見え隠れしていた。
「渚…!!」
前原と一緒に男の方へ駆けながら、後ろで鳩と戯れている渚に声をかければ、パンッ!と鋭い音が放たれる。
その音に吃驚した鳩達が一斉に羽ばたいていった。
男はそれに一瞬気を取られる。
男がもう一度視線を戻した先にいたのは王女様…の格好をした中村だった。
男と目が合った中村が不敵に笑う。
「あれぇ、王女様に見えた?」
男が焦った隙に注射器を叩き落とす。
そのまま中村の後ろに待機していた浅野兄が強烈な蹴りをお見舞いすれば、男はその場に倒れた。
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CrystalpalacE