真面目だな…

こっそり見守ってた殺せんせーに助けられながら、近くで待機していた黒いコートの仲間も無事に確保。
警官の格好をした殺せんせーはノリノリで「逮捕ですねぇ」と風船ガムを膨らませていた。
そんな殺せんせーにハトのエサとして使っていたスナック菓子の残りをあげたら、お返しにガムを1枚手渡される。
それを受け取ると、殺せんせーはマッハで姿を消した。


「大丈夫だったか、優良…!」


殺せんせーとのやり取りを終えた後、浅野君が優良ちゃんの所へ駆けて行くのが見えた。
優良ちゃんが大丈夫の意味を込めて頷くと、浅野君がほっとしたような表情を見せる。
それから浅野君が優良ちゃんの頭を撫でて、優良ちゃんが幸せそうに笑って…。
しばらく様子を窺っていたけれど二人の世界に入ったまま戻って来る気配がなくて、磯貝君がさりげなく呼び戻していた。

律の知らせを聞いて合流したクラスメイト達も含めて、再び作戦会議を開く。
とりあえず無事に王女様を駅まで連れて来ることに成功したので、このまま予定通り電車で移動することにした。
王女様の周りを固めるメンバーの変更と、王女様に変装している中村さんを先に電車で行かせ、その次に来た電車に王女様を乗せることになった。


「オレと寺坂と浅野クンは中村と一緒に先に行こう」


「バスに乗ってる所を見られてたら、暗殺者を引き付けられるかもしれないし」と続けたカルマに浅野君が即座に反対した。
おとり作戦には賛成みたいだけど、自分が王女様の警護から外されるのは納得がいかないみたいだ。
…まあ、エスコートを任されたのは浅野君なわけだし。


(真面目だな…)


心の中で苦笑いしていると、カルマが浅野君を茶化す。
将来のことについて固く約束したとかなんとか、…カルマが多少話を盛っているんだろうけど。
その話題に真っ先に反応したのは浅野君本人ではなく、前原君だった。
勝手に盛り上がろうとしている前原君達に浅野君は慌てて「誤解だ!!」と叫ぶと、元凶であるカルマに「変な言い方をするな!」と怒鳴った。

そんな色めき立った会話に、いつもの調子で岡島君が「王女、いい乳してるもんなぁ」とにやにやと入って来た。


「「「……」」」


一瞬で空気が凍ったのが分かる。
女子どころか、男子からも冷たい視線を浴びる岡島君に「汚らわしい…」と茅野が言った。
「今に始まったことじゃねーだろ」と寺坂君達が呆れたように言えば、その言葉に反応したのは浅野君だった。

こんなヤツと1年間も同じ教室にいたのか、優良は…!!と目が語っている。
浅野君の言いたいことはよく分かるのでフォローできないかな…岡島君。
磯貝君も苦笑いで流していた。

散々な言われように落ち込む岡島君に、優良ちゃんを背中に隠した浅野君が一言「優良の視界に入ったら抹殺する」とだけ告げた。

…目が本気だった。
浅野君はともかく、理事長が知ったら本当に抹殺されそうだ。

冗談に聞こえない一言に乾いた笑みを浮かべていると、僕のスマホから場の空気に似合わない明るい声が響いた。
…律だ。

スマホを取り出して確認すれば、片岡さんからメールを受信したことを教えてくれた。
頼んでおいた王女様暗殺の黒幕について、情報を探るために竹林君と不和さんと大使館に忍び込んでいるみたいだ。
何故か大使館内にいたビッチ先生と一緒に調査中とのこと。


「ありがとう。詳しいことが分かったら、また連絡頼むって伝えてくれ」


磯貝君が律にそう頼むと《了解しました!》と敬礼ポーズをして画面から消えた。



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