誰も助けてあげないんだ…

カルマの唐突な振りに慌ててノートやら参考書やらを広げていると浅野君がやって来た。
…覗き見していたカルマ達を連れて。
覗いてた皆は、バレたなら仕方ないよねと言わんばかりに王女様に挨拶してるし…。

「これは小言を言われるんだろうな…」と磯貝君が苦笑した。
それに、僕と茅野も苦笑いを返していると、喫茶店のドアベルが鳴り響いた。
入口の方へと視線を向ければ、スマホ片手に優良ちゃんが立っているのが見える。


「あ…」


「本当にいた」と笑っている優良ちゃんに茅野が手招きした。
それに誘われるように優良ちゃんが僕達の所までやって来る。


「ほら、優良ちゃん、王女様だぜ!」


前原君がそう声をかけると『は、初めまして、王女さま』と嬉しそうに挨拶していた。
「どうしてこんな所にいるんだ」と浅野君が優良ちゃんへ尋ねると「秀くんと王女さまがここにいるって聞いて…」と僕達が愛用しているコミュニケーションツールの画面を浅野君に見せた。
…あ、それは見せたらまずいんじゃ。


―――浅野君が喫茶・丘でデート中!お相手は王女様!!

「…」

「「「…」」」


さっと浅野君がこっちを向いたので、さっと顔を背ける。
いや、これはE組のみんなに送ったものであって、優良ちゃんだけに送ったものじゃないよ…。
それに、送ったの僕達じゃなくて中村さん…。
浅野君からの視線に耐えていると、前原君が話題を変えるように王女様へと話かけた。


『王女様、あなたは本当に美しい…。まるで芸術品のようだ…!』


…話かけたというか、口説いてた。
ぺらぺらと英語で口説き文句を連発する前原君を見て、中村さんまで『ボクと一緒にシャワー浴びないかい?』と言っていた。


「…君達、おかしいんじゃないか?なんでそんな用途の英語ばかりすらすら出てくるんだ!」

「キザなセリフも英語だと言えちゃうんだよねぇ」

「それに、うちの英会話の授業は外国人先生のディープキス付きなんだぜ?」


羨ましいだろー、と前原君が笑った。
あ…それは言わない方が良かったんじゃ…。


「全く嘆かわしい…!E組はそんなふしだらな教育を受けて…い、るのか……」

「…?」


浅野君の言葉が途中で詰まる。
それからしばらくして「優良…!」と叫んだ。


「最近やたらとキスが上手くなったと思ったら、まさかそういう理由だったのか…!!」

「…!!」


なんか、とんでもないことを暴露してる浅野君と突然話を振られてびっくりしてる優良ちゃん。
完全に飛び火だ…。

困っている優良ちゃんを他所に、今がチャンスと『ほら!ここに座って、私達と一緒に話してよ!』と中村さんが英語で王女様を誘っていた。

だ、誰も助けてあげないんだ…。
むしろ、優良ちゃんを餌にして浅野君の気をそらしてる隙に、みんなで王女様に話しかけていた。



*

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