界境防衛機関。

私自身が犬飼くんであることがはっきり分かってから、犬飼くんに申し訳ないとか、いろいろ悩んだ。
悩んだけど、どうしようもないので、犬飼くんの分もしっかり犬飼くんとして生きようと結論付けた。
結論付けたのは良いんだけど、私、犬飼くんのこと、あまり詳しく知らない…、という壁にぶつかった。

確か、二宮隊の人だよね。
つまりはボーダーに入隊しないといけない…。
…犬飼くんって、いつボーダーに入隊したんだろう…?
何か動機とかあったのかな…。
全然知らないんだけど、どうしたら…。

ボーダーのサイトを見ながらむむむと悩んでいたら、荒船くんが「…なんだ、ボーダーに興味あんのか」と声をかけてきた。
時間はお昼休み。
昼食を買いに行っていたはずの荒船くんが、いつの間にか戻ってきたみたいだ。

私の前の席が荒船くんの席ということもあり、荒船くんとは入学当初からよく話す友人である。
…彼曰く、それより前に一度会ってるらしいんだけど、思い出せないし、聞けないしで現在も分からないままなのが少し申し訳ない。


「オペレーター志望か?」

「ううん、戦闘員」


素直にそう答えれば、すごくびっくりされた。
え、そんなに驚くことかな…。
しばらくの沈黙の後「…大丈夫なのか?」と難しい顔で言われた。


「…私には向かないかな?」

「そういうわけじゃねーけど、」


「なんか危なっかしい」と言葉を続けた荒船くんに、心配してくれてるのかぁと頬が緩んだ。
まだまだ付き合いは浅いけれど、それでも荒船くんが優しい人だということくらいは知っているつもりだ。
「荒船くんって、意外と心配性だよね」と笑っていると、ほっぺをむぎゅりとつままれた。

い、いたい…。
私のほっぺから手を離した荒船くんは少しだけ考える素振りを見せると「わかった」と一人で何かを決めたようだった。


「俺も入る」

「…え!!」


今度は私がびっくりする。
た、確かに荒船くんもいずれはボーダーに入るって知っているけれど…!
このタイミングで良いんだろうか…!!


「え、え…、なんで…?」

「もともと、入ろうか考えてたのもあるけど、」


「やっぱり心配だしな」と苦笑いした荒船くんに、彼はこう見えてとても面倒見の良い人なんだと知った。
…それより、こんな感じで入隊して、荒船くんも犬飼くんも大丈夫なのだろうか。
それとも、もともとこんな感じで入隊したのかな…と、いろいろ考えても答えは分からない。



◆◆◆◆◆



ボーダーに入ると決めた所までは良かったのだけれど、ここまできて思わぬ問題と直面した。
ま、まさか、家族を説得するのがこんなに大変だったとは…。

両親も姉達も口を揃えて「危ない、止めなさい」だった。
戦闘員として入隊しようとしていることが問題なのかと思って、オペレーター志望にしてみたけれど結果は変わらず。
え、どうしよう…。

犬飼くんは、一体どうやって入隊したんだろう…と考えた所で、犬飼くんは男の子だったとため息をついた。
「女の子がそんな危ない…!」と家族の中でも断固反対している父をどうやって説得したら良いのだろうか…。



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