目が覚めて視界に広がったのは見慣れた天井と不安と驚きが入り交じったような表情をしている私の妹たちだった。

「菖蒲お姉様!」
「楓…」
「よかった、目が覚めて!お姉様2日も眠りっぱなしだったのだから。」
「!2日も…私どうやってここに?」

私のその言葉を聞いた楓はあからさまに驚いて困った様に話し始めた。

「…お姉様は2日前の朝、村の入り口の所に倒れていたんです。何があったのか分からないけど…その時血塗れで着物も破れたのに傷とかは無くて…」
「…桔梗を呼んできてもらっていい?」
「あ!はい!」

楓の出て行く姿を眺めたあと自分の体を改めて見ると確かに肩や腕の傷は跡形も無くきれいに消えている、大体の予想は考えたくはないがついていた。

「っ…」

試しに近くあった矢の先端で腕に傷を入れてみればしばらくしてそれは、まるで始めからそこには何も無かったかの様に傷は消えてしまった今、予想は確信へと変わり私の背筋を寒い物が通り抜けた。どうやらあの男が私に食わせた人魚の肉と言う物は本物だったらしい。どうしていいか分からない私に残された道は一つだった。


***


あれから少ししてから私は記憶が途切れたときに居たあの場所にやってきていた。だが何か手がかりになりそうな物は見当たらなかったが、近くの茂みに入ってみればもう乾いてしまっていたが血痕がらしき形跡があった。だがいくら探してもあの男の姿は見当たらない。死んだと思っていたが彼もまた不老不死だと聞いていた、きっと生き返ってどこかへ行ってしまったのだろう、もうそれ以上はなにも掴めなかった。

「そう言えば私どうやってあそこまで…」

色々と大変な事が起こり過ぎたのかその日の出来事についての記憶はだいぶ混濁していた。少しずつ考えて記憶の断片を探れば、意識を失う少し前にあの妖怪の姿を見たような気がしたことを思い出す。

「…見逃した上に、助けてもらったのか」

なぜ助けたのか、確かにそれは疑問に残ったがいつかもし会うことがあればその時にでも聞いてみればいい、なんと言っても時間は皮肉にも有り余るぐらいあるのだから。


***


その日は朝から村に嫌な雰囲気を漂っているような気がしている、そんな一抹の不安を胸に抱えつつ私は過ごしていた。あの日からもう早くも二月が経とうとしていた。あれからは本当に平穏な日々が続いている、ただどんな傷を負っても直に治ってしまう事以外は。

「姉上…?」

桔梗はあれから日に日にきれいになっていった、どうやら犬夜叉とは上手くいっているらしい、本人は認めていないが彼女の姿は微笑ましかった。つい先日も四魂の玉を使って犬夜叉を人間にするとこっそり私だけには伝えてくれていた、自分の事を思い動いている桔梗を見るのは新鮮で姉としては何となく嬉しかった。

「どうしたの?」
「少し上の空だった気がしていたので」
「あぁ、ちょっと考え事をね」
「そうでしたか。…じゃあ私は先に戻っていますね」

桔梗がその場を去ってしばらくしないうちに後ろから見慣れた姿を目にする。

「おい…菖蒲」
「犬夜叉!…どうかしたの?」

声をかけてきたのは犬夜叉だったがどうにも近付いてくる気配はなかった。それを不思議に思いつつも彼が話を続けるので私もそれにのる。

「お前に話したい事がある。明日の朝またここに来てくれ」
「え、あ…」

そう用件だけを言うと足早に去って行ってしまった。何だか何時もと様子が違うような気もしたが朝から少し過敏になっているだけだろうと思い、明日の事もあるため私はあまり深くは考えずそのまま村へと戻っていった。

明日でこれからの運命が一変するとはこの時の私には想像もつかなかった。


 


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