「あれは…」

すれ違ったその人影に任務帰りの4人のうち2人が二度見するように振り返る。そして顔を見合わせ、スカした顔してさっさと進む同じ班員を問い詰める様に駆け寄った。

「お、おい!おいってば、サスケ!」
「サスケくん…!今のって…」
「……」

あからさまに嫌そうな顔をしたサスケに負けじとからむナルトとサクラ。そのあまりの気迫に押し負けたのか大袈裟にため息をつきながら口を開く。

「…なんだよ」
「今サスケくんのお兄さんと歩いてた人ってカズラさんよね…」
「見たことねぇ様なすんげえ笑顔だったってばよ!」
「イタチだって笑う事ぐらいある」
「そう言う事じゃなくて…!!」

ジロリと音がしそうなぐらいの視線を向けられ思わずたじろぐ2人に舌打ちをする。徐々に苛立ちがつのっているのがひしひしと伝わってきていた。

「……お前らの想像してる通りだ」
「!えー!!うそー!あのお兄さんにそんな人が居たなんて…きゃーっ」
「お前の兄ちゃんってばイケメンだからな…カズラ姉ちゃんも美人だったし…ってサスケ?おい!どこ行くんだよ!」
「…帰るに決まってんだろ、ウスラトンカチ」

その後は制止も聞かず1人足早に帰ってしまったサスケの後ろ姿を眺めながら、ナルトは首を傾げた。

「なーに、不機嫌になってんだ…サスケの奴」
「そうね…急にどうしたんだろ」

不思議そうにする2人に先程のやりとりを終始眺めていただけのカカシが頬をかきながら何とも言えない表情をしここに来て初めて口を開いた。

「んー、サスケの奴もまだまだ若いねぇ…」
「ん?どう言う事だってばよ、カカシ先生」

その言葉に何やらピンときたらしいサクラはサスケくんにも以外と可愛い所あるのね、何て照れた様子で喋っている姿を見てもナルトはカカシの言葉の意味を読み取れないでいた。



***



「…おい」
「帰ってきた時の言葉はただいまでしょ?」

ぶすっと、見るからに不機嫌全開で帰ってきた来たサスケの第一声はそれだった。産まれる前から知ってる彼が何故こんなに苛立っているのか何と無く予想はついている。

「…もっと周りを見て行動しろ、最後に迷惑被るのは俺だ」
「…っ」

そっぽを向いたままそんな事を言うサスケに思わず吹き出してしまう。いくら秀才や天才言われていてもまだ13歳、年相応の可愛さが垣間見えて自然と笑みがこぼれた。そんなサスケと目線を合わせるようにしゃがめばちらりとこちらを向いてからばつが悪そうにする。

「何笑ってんだよ…」
「いやね、…うん、大丈夫大丈夫」
「……?」
「イタチはサスケの事物凄く大好きだから安心しなよ」
「は、はぁ?何言ってんだよ…!」

やはり図星だったらしいサスケの頬が赤く染まる。まるで威嚇するようなその態度に笑いながら頭をぐりぐりと撫で回しているとその手を叩かれた。

「子供扱いするなっ!」
「おー、怖い怖い」
「っ…!!」
「…何をしてるんだお前たち」

今にもとってかかりそうなサスケを止めたのは他でもない話の中心イタチその人であった。台所で一悶着起こしそうな二人を壁にもたれながら呆れた様子で眺めている。

「イタチ…!」
「あ、おかえり」
「あぁ…ただいま」

そう言いながらこちらへ歩いて来てぽんとサスケの頭に手を乗せる。先程までの勢いはいずこへ、兄を目の前にうっと言葉を詰まらせた。

「お前は…またカズラにつっかかっているのか、サスケ」
「別に。つっかってなんかねぇよ」

フンと鼻をならし完全に拗ねてしまったサスケに二人は顔を見合わせた。その顔には自然と柔らかい笑みが浮かぶ。

「サスケ、久々に組手でもするか」
「!!」

ぱぁっと明るくなるが直ぐに伝わってくる。イタチよりも素直なサスケの、その姿は微笑ましいかった。

「…お前がどうしてもっつーなら…付き合ってやる」
「ったくお前って奴は…」
「イタチもサスケも夕飯までには帰って来てよ?」
「あぁ」

急かすように玄関へ向かったサスケの後ろ姿を眺めていたイタチの視線が不意にこちらへ向く。不思議に思っていたのも束の間先程のサスケと同じように頭へ手を置かれる。見上げた先にあったのは優しい顔、

「…?」
「カズラ…俺はお前の事も勿論、想っているからな」

そして額にそっと唇が触れる。行ってくる、そう言い残したイタチに私はずるずるとその場に座り込む事しか出来なかった。

「…それは、それはずるいよ…イタチ」


 


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