それはよく晴れた日だった。昨日はどきどきと期待で眠れなかったのに朝は早くから目が覚めて少し寝足りない気もしたが二度寝はせずに、布団をたたみパパッと身支度をしてから居間へと向かう。朝飯を作っているのだろう、台所から包丁の音がした。

「母さん」
「あら、イタチ。今日も早いのね」
「待ちきれなくて…今日でしょ?シシさんと‥カズラが来るの」
「えぇそうよ、でもシシさんはお父さんと大切なお話があるから邪魔しないようにね」
「大丈夫、分かってる。…まだ時間あるし少し修行して来るから」
「え!ちょっと…」

母さんの制止の言葉に聞こえないフリをして玄関の扉を開ける。本当は手伝いをすべきなんだろうけど、何故かどうにも落ち着かなくて居ても立っても居られず家を出た。久々に幼なじみに会える、それが嬉しくて柄にもなくはしゃいでいるんだと思う、何せ会うのは久々だった。
何時も通り練習場でくないや手裏剣術の練習をしていればあっと言う間にに時間は過ぎる。汗も少しだがかいたし、帰って風呂に入る時間を逆算し最後に火遁の練習をして帰るかと思い、池の前に立った。

「火遁!ごうか…っ!」

何回か豪火球の術をやりこれで終わりにしようと考え集中してチャクラを練り一気に吐き出そうとした瞬間、目の前で池の魚が跳ねる。そのほんの一瞬につい気をとられ口元を軽く火傷した。普段ならこんな事は滅多にないのだがきっと浮かれているせいもあるのだろうと、一人納得し帰るかと立ち上がったその時不意に上の方から声をかけられた。

「ねぇー、大丈夫ー?」
「!!…」

その声に振り返ると上の方に見かけない女の子が立っている。大丈夫だと返事をしようとしたがそれよりも早く彼女はぴょんとそこから飛び降りた。危ないと思ったのも束の間綺麗に着地をし距離を縮められる。色んな驚きで固まってしまっていた俺をまじまじと見つめてくるその視線に思わず違う方向へとそらす。

「やっぱり軽い火傷してる」
「…これぐらい平気だ、慣れている」
「駄目。ちょっと待って」

そう言いつつ何やら印を結ぶ彼女の足元には何やら植物が生えてきた。少しだけ見たことがあるようなその術に何かが引っかかる。そんな俺を他所に彼女はテキパキとその植物を使い、それを傷口に塗ってきた。ひりりとしみて少しだけ肩が揺れる。

「っ…」
「ちょっと痛いかもしれないけど我慢してイタチくん」
「!何で名前…」

そう言うと今度は目の前の彼女の目がまんまるになる。とても驚いた表情の中に少し寂しそうな顔がちらつき、ふせられた瞳には俺が映っていた。

「酷いなぁ…忘れるなんて。でもだいぶ会ってなかったし」

そう言い笑ったその顔にはっとなり、先程の術と柔らかいその表情に記憶が一気に回顧する。

「……カズラか?」
「!思い出した?よかった」
「あぁ、…すまない、直ぐ思い出せなくて」
「いいよいいよ。はい、終わり」
「ありがとう」

お礼を言いながらにこりと笑うその笑顔に何故だが心臓のあたりがきゅうっとなる。久々に会ったカズラは随分と雰囲気が変わった様な気がして会わなかった期間の長さを痛感した。

「それにしてもイタチくん、大きくなったね」
「そう、…かな」
「うん、ほら!…でもまだ私の方が大きいや」

ぐっと縮まる距離に心臓は忙しなく動いていたが平然を装う。近い距離にこの音が聞こえてしまわないだろうか、とか顔はちゃんとしてるだろうかと悩んでいた俺の頭にぽんと手を置かれた。何だと思い顔をあげればそこには上から見下ろすカズラの姿が。ちょっぴり自慢げなその顔と身長の差に二年の壁はとても大きく感じた。

「…直ぐに追い抜いてみせる」
「おー!負けないから…!」

そう言ってつられるように笑えば何故かピシリと固まってしまった。何かやらかしたのかとあたふたしていると不意に方を掴まれ、少しだけ驚く。プルプルと小刻みに震えているのに気付き何処か痛いのかと顔を覗き込めば勢いよく抱きしめられた。

「!!!!」
「い、っ…イタチくん、かわいい…!」

顔が真っ赤になっているのが分かるぐらい頬が熱い、心臓は大きな音を立てている。何が何だか分からないのと、羞恥で頭がうまく回らずにいた。

「カズラっ…くるしい」
「え、あ!ご、ごめんね!?」

直ぐに腕の力は抜かれたが相変わらず抱きしめられたままの状態になる。ふわりとカズラからは女の子独特のあの良い香りがして俺の鼻腔をくすぐった。かわいいと言われた事に不満はあったが、そんな事が吹っ飛ぶぐらいに今、頭の中はカズラでいっぱいいっぱいだ。

「もっと…もっと大きくなってカズラの身長を越すから…っ」
「?うん」
「…だからそれまで待っててほしい」

何を言っているのか自分でもこの時よく分からなかった。去年カズラはアカデミーに入学したと聞き、そして久々に会えば何処となく大人っぽくなってしまったそんな姿に焦ったのかもしれないし、何だか無性に何処か手の届かない所へ行ってしまうような気もした。そしてなぜこんな風に思っているのかこの時までは検討もつかないでいた。

「うーん…何だかよく分からないけど、いいよ。待ってる」

けれどその時の彼女の表情を見た時、初めて体の底の方から湧き上がってくるこの感情の正体が恋だと俺は気付いたのだった。


 


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