長期任務で家を空けているフガクさんとミコトさんに代わって家事全般をする為にうちはの家に通う日が早くも3日を過ぎようとしたそんな頃だった。
今日も渡してもらっている合鍵でそっと裏口から寝ているであろう2人を起こさない様にお邪魔する。てきぱきと朝食の準備をしつつアカデミーに通うサスケの弁当、そしてついでにイタチの分もと忙しなく働き回る私の背中が突然重たくなったかと思えば腹に腕が回されていた。

「おはよう、イタチ」

ぐくっと寄りかかる様に後ろから抱きついて来たものの状態は振り返らなくても分かっているので手を動かしながら名前を呼べば寝起きだったらしく、掠れた声で返事をされる。少しどきりとしたのは秘密だ。

「…悪いな、今日も」
「別に好きでやってるんだし、気にしなくていいよ」
「……そうか」
「…それに木ノ葉の優秀な忍のイタチには任務をしっかり頑張ってもらわないとね」
「それもそうだな」

と会話を交わしつつもどうやらイタチは離れる様子を毛ほども見せないどころか、ますますぴたりとくっ付いて来ている。まだ結ばれていない髪の毛がさらさらと頬に触れ、少しくすぐったい。

「…ねぇ、イタチ。ご飯の準備やりづらいからそろそろ離れて、ね?」
「…もう少しぐらい大丈夫だろう」
「いやいや…今日もイタチ朝から任務でしょ。サスケだって試験があるから早く行くって…」
「………。」

返事の代わりにぎゅうっと腕に力が込められた。甘えてくれてるのかな、と都合のいい事を思いながら菜箸を置いてぽんぽんと肩口叩く。それから振り返ると少し寝癖のついたイタチがそこにはおり、私の胸をきゅんと弾ませた。

「…今日の味噌汁キャベツだよ、早く用意して来て」
「!…」

そう言えば微かに反応を示す。どんだけキャベツ好きなんだとは思いつつ結構これは効果的だったと自分を褒めてやっている私の目の前で少し悩んだイタチが分かったと言ってくれた。

「じゃあ…」
「カズラ…、」

再び準備に取り掛かろうとした私を遮ったのは肩を掴んだイタチの手。何だと思い見上げると間近にイタチの顔が、しかもゆっくりとそれが近付いてくる。何をされるか理解した瞬間がらにもなく心臓が大きく鼓動を打ち初めた。そっと目を閉じあと少し、触れ合いそうなその瞬間。

「おい……」

一つの咳払いと共にかけられた言葉にぱちっと目を開いて慌ててイタチを押し退ける。そして声のした方を見れば案の定ぶすっと不貞腐れたサスケがそこに立っていた。

「サ、サスケ…」
「俺今日早いって言っただろ。…それに兄さんも、任務だろ」
「……あぁ」

何処と無く残念そうなイタチは私にまた後でな、とそっと耳打ちをし居間を後にした。残された私とサスケには気まずい雰囲気がながれる。

「……おい」
「え、あ、何?」
「飯は」
「!今並べるから」

そう言うとサスケは大人しく定位置に座った。やはり不機嫌そうな彼にどうしたものかと頭を抱える。サスケにとって私は大好きな兄を奪う嫌な奴なのだろう、相変わらず敵視する様なその視線を受け止めつつ彼のお皿にはとりあえず少し多めのトマトを乗せてご機嫌をとってみることにした。

「…はい、どうぞ」
「!…………いただきます」

どうやら成功したらしい。とそうこうしている間に身支度を済ませたイタチが顔を出す。サスケの隣で私と向き合うように座ったイタチの機嫌がキャベツの多めによそわれた味噌汁を見ると少し良くなったのを感じ、やはり兄弟だなと私は頬を緩めた。


 


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