【5】褒められたい



「凄い凄い!リエーフくん、研磨とのタイミング合ってきたね!」
「双葉先輩、見ててください!俺はエースになる男なんで!」
「もう一本行くよ。」


隣のコートで研磨とリエーフがマンツーマンで練習している。
双葉はリエーフにボールを出しているわけだが、なんだか面白くねぇ。


「リエーフ!双葉ちゃんから褒められるからって調子乗んなよ!」
「なんすか、夜久さん!ヤキモチですか?」
「てめぇ…」
「夜久さんはレシーブが誰よりも上手だから、リエーフくんもちゃんと見習わないと!」
「あ…そ、そう?」
「何鼻の下伸ばしてんのさ。」
「黒尾さんこそヤキモチですか〜?」


夜久コノヤロー。
双葉も双葉だ。あれから特に何も言ってこない。
俺が好きじゃないんでしたっけ?

…俺よ、待て待て。なんだその自意識過剰ヤローは。


「クロ先輩!」
「うぉ!ど、どした?」
「…大丈夫ですか?」
「大丈夫大丈夫!」
「ならよかった!これ、今度の合同合宿の日程表と備品リストです。確認お願いします!」
「おー、さすが双葉。サンキュー。」


数枚の用紙を受け取りその場で確認する。
俺の確認が終わるまでの間も、部員への掛け声を掛けてくれていた。ちらっとその様子を見ていると双葉と目が合ってドキッとした。
大丈夫でしたか?とニコニコ笑うその笑顔に心臓がバクバクしてうるさい。


「完璧。いつもありがとな。」
「わあ!クロくんに褒められた!」


こいつはたまに不意打ちで"先輩"ではなく、幼い頃一緒に遊んだ時のように"クロくん"と呼んでくるのは、本当に心臓に悪いです。


「双葉ちゃん、テーピングこれが最後かな?」
「いえ!まだありますよ!怪我ですか⁉」
「いや、ちょっとした突き指だから大丈夫だよ。」
「部室にあるはずです!持ってきます!」
「自分で行くよ。邪魔してごめんね、黒尾。」
「?」
「いいから早く行ってきなさいよ、海くん。」
「海先輩はいつもニコニコして優しいですよね。」


最近、三年連中が俺の恋心に気づいていじってくる。
部内恋愛ですか。
まぁ、他の奴らに狙われるよりはそばにいてくれた方がいいいか。
それより…

(双葉さん)
(なんでしょう、クロ先輩!)
(俺は褒めてくんないの?)
(え!?いつもかっこいいです!まず!)
(やっぱいい!声が大きいよ!)
(黒尾ー!双葉ちゃんに何言わせてんだよ!)


―俺だけ褒めてくんないかな。

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