「京都からきました。花開院といいます。
フルネームは…花開院ゆらです。どうぞよしなに…」
なんと、あの女の子がうちのクラスにやってきた。休み時間になると彼女の周りにはたくさんの人が集まる。
それとは別にもうひとつの人溜まりができていてそちらの中心にはワカメくんがいる。旧校舎での件でもまだ諦めていないらしく今度は怪しいコレクターから買い付けた呪いの人形で妖怪の存在を証明するらしい。
(ワカメくんもよくやるよなぁ。私なら諦めるわ……。妖怪を追い求める研究者としての態度は普通に尊敬できるのにいかんせん言動がなぁ……)
「その話…本当?それ…私も見たいんやけど」
お、二つの中心が混ざり合ってビックバン起こした。ワカメくんは興味津々で目をきらめかせる花開院さんの手を掴んで喜んでいる。花開院さんの後ろではこれから『清十字清継に同調する変人』の称号を彼女につけるか否かが議論されてるぽいだけどいいのかな。
「おや、家長さんと奴良くん!!ちょうどいいところに!!」
げ、とかしまった、と言う言葉は聞かなかったことにして、もしくは本当に聞こえなかったのか乗り気になり朝のローテンションなどかけらも見せなくなったワカメくん。
「よぉーしのってきたぞぉ!!清十字怪奇探偵団!!今日は僕の家に集合だからなー!」
って、その中にはカナちゃんも含まれてるのか。今更ながらの事実に気づく。
「ねぇ清十字くん。私もその人形に興味があるんだけど探偵団に入っていいかな?」
「もちろんだとも!」
快く返事してくれたワカメくんよ、すまない。妖怪にも人形にも探偵団にも興味なんてないんだ、強いて言うならカナちゃんに興味があるだけなんだ。
まじでごめんよ。
___
案内された清十字家はとても大きな洋館だった。奴良家とどっちが大きいんだろうと考えても結局、どっちの家も金持ちってことしかわからなかった。財産半分くらいよこしてほしい。
やけに豪奢な廊下を歩くとまたまた余計なくらい飾り立てられた扉が出てくる。その奥に人形があるらしい。大きな部屋の中はどこぞの博物館のような資料室だった。
みんな 放心して物珍しげに目線をせわしなく走らせている。
「これ、全部清十字くんが集めたの?」
「ふふふ…ボクのプライベート資料室さ」
私の問いかけに自信満々に答えるワカメくん。ワカメくんのおじいちゃん(大学教授)の部屋だが、いつかは自身のコレクションで埋める予定らしい。
(おお、この壺売ったらウン百万はしそう…仲良くなったらひとつくらいくれないかな)
「そーはいかないよ!」
奴良くんの声がまるで私の考えてることを否定しているように聞こえて、ついついどきりとしてしまう。振り向けばつららと仲よさそうに喧嘩してる奴良くんの姿。
「また……」
「あの2人も仲いいね…あはは」
あの2人がイチャイチャするとカナちゃんの顔が険しくなるから家でイチャイチャしてほしい。でもそれされたら私が嫌だから結果的に言うとイチャイチャしないで!リア充は撲滅じゃい。
「この日本人形なんだけどね…」
ワカメくんの持ち出してきた人形はいかにも呪いの人形ですといった風貌の日本人形。髪は乱雑に伸びてており、着物も綻びが多い。
『の……っる。オ…をステヤガッテ…』
「島くん、何か言った?」
「え、俺は何も……」
じゃあ今のは誰だ。急に目の前のそれの背後に黒い靄が見えた。
「ほ、本当に…呪いの人形なん…?」
「信憑性は高いと思う。一緒に持ち主の日記が残ってるんだ」
「日記?」
ワカメくんが人形の横に置いてあった古びた日記帳を取り上げて読む。
「2月22日……引越しまであと7日。昨日、祖母にもらったこれを機に日本人形を捨てることにした」
使い古されたホラー映画のシナリオのような内容がつらつらと読み上げられる。
ガバッ。
その途中でなぜか孫が日本人形にタックルした。なんだ、情緒不安定か。
「ははは、ごめん聞いててかわいそーだったから!」
「貴重な資料にタックルするなー!!」
『イタ…ノロッてやル…この…ガキが……』
また声がした。このメンバーはみんな同い年だし、いくら孫の身長が低いからと言ってガキ呼ばわりする人はさすがないない。
となると、
「人形か」
「どうかしたのかい?浮世絵町で一番古い神社の巫女から意見があるなら是非聞きたい!話してくれたまえ!」
「麻宮さん、巫女さんなん?」
「いや。巫女なんてもんじゃないし、私はただの……。
と、とにかく私は続きが聞きたいな、清十字くん!」
花開院さんに体を上から下までじろじろ凝視されてやりづらいが、気にしないことにして日記の内容を聞くことに集中する。
「2月24日。彼氏に言って遠くの山に捨ててきてもらった。
その日の夜、彼氏から電話。
『助けてくれ…。気づいたら後ろの座席にこいつが乗ってた』
考えてみれば昔から変だった…この人形…」
ミシミシッ。変な感覚がして人形の方を見れば明らかに髪が伸びてた。ワカメくんは日記を読むことに集中していて気づいていないようだけど、これはやばいかもしれない。
「2月28日、引越し当日___」
「日記を読むのをやめてぇぇーー!!」
「カナちゃん、危ない!」
孫がワカメくんを止めにかかるのと同時にカナちゃんをかばう。
人形はどこからともなく持ち出した刀を振りかざして表情も柔らかい少女のそれから鬼の形相へと変貌している。
バンッッ!ゴッ!
破裂音がしたかと思うと、床に転がった人形は全身にお札が張られており、時折動こうとしては節々をきしませ、大声を出そうとしては低い声で唸っている。
「陰陽師・花開院家の名において、妖怪よ…あなたをこの世から滅します」
振り向けば、そこには先ほどまでのぼんやりとした雰囲気を脱ぎ捨て凛々しく眉を寄せ、式神を操る花開院さんの姿があった。
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