「じゃあ、久々の学校と中学初日、頑張るから見守っててください」
仏壇の中で笑うおじいちゃんとおばあちゃんがに手を合わせてお願いする。
桜が吹雪く季節のとある日。
私は少し大きめのセーラー服に身を包んでいた。青いセーラー襟が特徴的な制服は浮世絵中学校もので、となれば私が今からすることなんて一つに決まってる。
私が奴良家に通うようになってから数年経ったのだ。時間の流れは早い。
神社の裏手に止めてあった中古の自転車にまたがる。つい先日までは錆びついて本来の色も見えなかったボロ車だったが全力で磨いて、整備してなんとかした。
そして、今じゃ劇的ビフォアフタァ。
なんということでしょう新品同様の輝きを見せています。匠の粋な計らいで籠はカバンが入る大きさに変わっているではありませんか。
学校は奴良家からも神社からも電車で通わないといけないくらいの距離があるのだが私の場合、定期のお金がもったいないので毎朝このマイカー(自転車)で通うことにしたのだ。
お金は浮くし、運動にもなるし最高……だよね。そう思わないと辛い。
「何も気にしちゃいけないか。レッツラゴー!」
「ぜえ、ぜえ、もう2度と自転車通学なんてしない……」
おかげで遅刻ギリギリじゃないか、全く。ハンカチで汗を拭いて、張り出されたクラス分けを確認する。
掲示板前の人混みからは友達同士が同じクラスだった違うかっただのと騒がしい声が聞こえてくる。
カナちゃんがいればそういうこともできたけど残念ながら今はいないのでエア友達と心の中でおんなじクラスだね、と喜ぶことにする。
やったぜ。なにがだ。
「薫ちゃん! 今年は同じクラスなんだ!」
さすがカナちゃん。期待どおりの可愛い反応を見せてくれた友人に拍手を送りたい。私の手を取ってぱあっとひまわりみたいな笑顔を向けられて目が開けられない。
ただし、カナちゃん以外の人は私に『だれおま』って目線を向けられてる。
そりゃあほとんどが小学校からの持ち上がりなのに転校生でもなさそうな新顔がクラス1の美少女とイチャコラしてたら不思議に思うよね。
とはいえここで自己紹介するなんてこともする気は無いのでみなさんには申し訳ないが徐々に慣れていってほしい。
退屈な始業式は寝て過ごし、お待ちかねの自己紹介も当たり障りのないことを言えば難なく終わった。各種配布物も全て手元にあるし、あとは帰るだけ、のはずなのだけれど。
「じゃあ早速だけど席替えしようか!」
陽キャな先生は唯一の知り合いが近くにいて安心しきった私の心を揺らすのが得意なようだ。
嫌だー!カナちゃんと離れたくねぇー!今後『近くの人とプリントを交換してください』とか『近くの人とグループになってください』って言われた時にぼっちになっちゃうじゃんか!
以上の理由から席替えなんて断固拒否、オコトワリシマス。なんて思っているのは私だけらしく、教室全体が席替えの言葉に目を輝かせている。みんなノリがいいかよ。
泣く泣く先生が夜なべして作ったというくじを引く。
(ラッキー、後ろの方だ)
幸いなことに前の方の席ではなかった。最前列が嬉しいのはライブのときだけだ。でもカナちゃんとは少し離れてしまうことになった。カナちゃんは私と対角線上の一から手を振っている。まあクラスが離れていた頃に比べればマシだと思いよしとした。
私がカナちゃんかわいいなーなんて考えながら手を振っていると隣の席の少年に声をかけられた。
「麻宮さんだよね? これからよろしく! 何かあったらボクに頼ってよ!」
このメガネくん、どこかで見た気がする…。けどよくわかんないな。近いようで遠い、そんな感じがするんだけど。
「うん。よろしくね」
でもこのタイミングで仲良くなった人って後々話さなくなるんだよなぁ。
なんて考えながら返答した。果たして私は輝かしい青春なんて送れるのだろうか。
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