「ごめんね、奴良くん」
「えっ、ちょ、麻宮さん!?」
早朝の教室。今週、少なくとも2回目の日直業務に勤しむ孫を呼び止めて謝った。
いきなり頭を下げて謝罪し始めるクラスメイトに孫だけでなく教室にいた全員がたじろぐ。
学校一いい奴で高名な男子生徒が地味で名前もよく分からない女子生徒に頭を下げられているなんてざわつかないわけがない。
きっとお昼には新聞部の号外ニュースにでもなっているのではないだろうか。
でも、謝ろうと思って登校して教室の扉を開けたらそこに孫がいたんだもん。これ以上ないタイミングを逃すわけにはいかないと頭を下げたのだ。
「よく知りもしないであなたのことを傷つけてしまったことを謝りたい。ごめんなさい」
戸惑った後、孫は言葉を選びながら口を開く。
「あ、あの時は僕も言い過ぎちゃったしお互いだよ」
「確かに言い過ぎだったとは思うけれど、私がやってしまったことは変わらないから。謝罪したいの」
否定はしないんだね……。との声が聞こえるがなかったことにする。
「薫ちゃん、何やってるの!?」
遅れて登校してきたカナちゃんに頭を持たれてあげられる。ついでにその柔らかい母性あふれる聖なるお胸に抱きしめられた。おお、頭に柔らかいカナちゃんの感し…、てはなかった。話を戻さなきゃ。
「私がちょっとやらかしたから謝ってるだけだよ。喧嘩両成敗ってやつ」
「そうなの…? それならいいけど……」
カナちゃんが眉を顰めて孫の方を睨む。
「リクオくん、あんまり私の親友を困らせないでよね?」
「え、ボ、ボク!?」
「分かった!?」
孫はピンと背筋を伸ばして元気よく「ハイ!…!?」とカナちゃんに答えた。其れがおかしくて私はまた、笑ってしまうのだった。
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