まさしく見えてかなふ

「きーみが神社の一人娘!麻宮薫さんだね!」
「そうですが、何か?」

バンッ!!
つららちゃんの作った冷たいお昼ご飯を頬張っていると、興奮気味に私の机に手をついたのは、前乗りにうねった髪に執念に燃えて逆に澱んだ瞳が怪しい男子。一応制服着てるし学生か……。
おかげでおかずの入れ物ひっくり返ったじゃないか。せっかくのハンバーグだったのに。

「僕は清十字清継。名前くらいなら知ってるだろう?」
「誰?」

ずこっ。清十字……ええい長いから髪の印象からワカメ君だ、は私に知られていなかったことにショックを受けてずっこけた。

「実は今夜、旧校舎に探索に行くんだけど是非君にも来て欲しいんだ。麻宮神社の巫女、薫くん!」
「いや、別に私は巫女じゃないですし」

なにか勘違いされてる。巫女にどのような印象を持っているか知らないが、私に除霊は、できなくはないけど、なるべくしたくない。ていうか、私以外の巫女だと除霊なんて普通にできないと思う。
 それに私が出来るのはせいぜい神社が潰れないようにお金の周りとか、檀家さんとお話しつけるくらいだ。神事とかは全部バイトさんとかおじいちゃんのお友達の人に頼んでるからわかんないんだよねぇ。
それより目下、私にとって問題なのは彼がベラベラと講釈を垂れている間にも肉本来の柔らかさを、床の上で取り戻していくハンバーグにある。

「ねえ清継くん」
「来てくれるんだね!集合時間は……」
「そうでなくて、お弁当どうしてくれるの?」
「え、ああ。気づかなくて悪かったね。よければこれで買ってくるといい」

 ワカメくんは床にぶちまけられたハンバーグやらトマトやらを一瞥してから高価そうなワニ革だかなんだかの財布を取り出し、さらにその中から一万円札を取り出しちらつかせる。

「そういう問題ではなくて。あんな風に食べ物をぶちまけて、勿体無あとは思わないの?」
「それは…」
「妖怪だか、幽霊だかに熱中するのは構まないけど少しくらい周りの迷惑を考えてほしいな」
「そ、そうだね。今後は気をつけるよ……それで旧校舎の件は」
「結構。暇がないので」

ピシャリと心のATフィールドを全開にするとさしものうざかったワカメくんも帰っていった。
はぁ、と床に落ちたおかずを拾う。まだイけるか?いや、お腹壊すかな…でもワンチャン……。

「よければハンバーグあげようか?冷めてるけど……」

孫に話しかけられて背筋が伸びる。流石に床に落ちて長時間経ったものを食べるのは駄目と答えが出たので拾い上げたおかずは仕方なくゴミ箱に持っていく。

「ううんいい。せっかくあなたのためのお弁当なんだから私が食べちゃうのも悪いよ」

 私と同じお弁当の中身。
 毎朝つららが早起きして作ってるのは孫のためだし、私はそのおこぼれをもらってるだけだから、必然的に中身は同じものになる。

「にしても偶然だね」
「なにが?」
「だってお弁当のおかずが全部同じなんて、すごい偶然」
「そりゃそう……もないね。うん。グウゼン、スバラシイ」

 危ない、今ムッチャクチャ自然と『そりゃ当たり前だよ☆なにせ製作者がおんなじつららちゃんだもん☆』だなんて口走りそうになった。隠すつもりはなくても流石にこのタイミングで言っちゃうと彼、ひっくり返っちゃうよね。

「にしても、なんだったんだろうあの人」
「ちょっと強引すぎな上に好きなことに一直線なだけだから、清継くんも悪気はないと思うよ」

苦笑いしてフォローしてもあんまり効果はないと思うぞ、孫。

「奴良くんは旧校舎に興味あるの?」
「あ、うん。一応そのつもりだよ」

なんのつもりもない質問のつもりだったが帰ってきたのは意外な答えだった。

「じゃあ、気をつけたほうがいいね」
「え」
「妖怪に悪いことがあるかも。……あと、女難の相」
「えっ!?じょな…、へ!?」
「ははは、平気平気。しばらくは死ぬほどの間に合うこともないから」

から笑いで吹き飛ばすが、どこまで本気でどこからが冗談なのかわからなさそうな微妙な視線は払拭されなかった。




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