祟り神と狐11
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三吉三 / 家 / 人外パロ / 転生
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三成の顔を見るのが怖かった。だから、背中に顔をうずめたまま、家康は言葉を続けた。
「ここを出て、ワシと一緒に行こう。お前のことはきっとワシが守るから、だから……」
「貴様は何を言っている?」
降ってきた声は、家康の予想に反して怒ってはいなかった。戸惑っても、ましてや喜んでもいない。
純粋に、訳がわからないといった声だった。
「みつな」
「貴様の言っている意味がわからない。もっと明瞭に話せ」
そう言って、家康の体を引き剥がす。
抵抗する気力はもう残っていなかった。家康の手はいとも簡単に三成から離れた。それなのに一人でうまく立つこともできなくて、離れたとたんにたたらを踏んだ。倒れかけた家康の背中に、大きな手が添えられる。
「しっかり立て」
ぐいと引き上げられた力は強い。当たり前だ。三成は狐とはいえ、立派な大人の男の姿をしている。腕も胴も、他の大人と比べれば細いが、子どもである家康とは比較にもならない。
そんな最初からわかっていた筈のことに、今さらショックを受けている。
黙ってうつむく家康に呆れたのか、三成が背を向けて去っていく気配がする。行かないでくれ、という一言が、家康には言えなかった。
三成に、拒絶されるのが、怖かった。
街灯がとびとびに照らす道を家康は一人走っていた。こうして真夜中に家を抜け出すのは二回目だ。
一度目の理由はすでに思い出せなくなっている。たとえ覚えていたとしても、それを上手く言葉に出来るかどうかは、また別の問題だろう。胸の中にすくっているぼんやりとした不安は、いまだに消すことができなくて、それどころかますます大きく、心を占めてきているような気さえする。
三成が、刑部の下を離れると、家康と一緒に来てくれると、そう言ったなら。
そうすれば、この不安も消えるだろうか。
自分でもどういうわけかはわからないが、三成をこのままにしておけない、という思いが、日に日に強くなっているのを、家康はやっと自覚せざるを得なかった。数日前に会ったばかりの、人間でさえない相手なのに、どうしてか、気になって仕方がない。
違う、気になるどころではない。家康は、三成が好きなのだ。
だから、刑部といて欲しくない。三成には正しい、明るい場所にいて欲しい。彼は、優しいから。美しいから。きれいだから。
彼を幸せにしたい。笑っている顔が見たい。誰にも彼の悪口を、言わせたくない。
――そうして、ワシを見てほしかった。
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2011/03/18
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