ジウスドラ セシリアは酷い衰弱状態のまま警察病院に入院していた。既に意識は取り戻していたが、身体は動かせない。能力を使えるようになるまでにはまだ一週間ほどかかるだろう。 彼女が為す術もなく天井を見上げていると、不意に横から声がした。 「セシリア」 少女の名前を呼んでいる。立っていたのは白衣の男だ。少しだけ首を動かしたセシリアが満面の笑みを浮かべる。 「ああ、よかった! 来てくれたのね博士! はやくこれから連れ出して。次は上手くやるわ!」 少女とは対照的に、男の声は冷静で平坦だった。 「いや、協議の結果お前は制御不能な場面が多く、これ以上所有していてもメリットはないという結論が出た。ここで廃棄処分される」 少女の顔色が変わる。信じられないと言いたげに目を見開き、真っ青な顔で声を震わせた。 「ウソ! ウソよ! だって私よ!? エスパーなのよ!? 貴重でしょう!? 今まで大切にされてきたのに、なんで!?」 「サイキッカーなら代わりはいくらでもいる。我々が本当に必要なのは"ジウスドラ"だけだ」 セシリアの腕を白い手が掴んだ。静脈に注射針を刺される。チクリと小さく鋭い痛みが走った。セシリアが眉を顰める。 白衣の男は少女に一瞥もくれず、用は済んだとばかりに部屋を出て行く。 セシリアがベッドから抜け出し男を追いかけようとするも、足がもつれて転んでしまった。 視界がぐるりと回転し全身に衝撃が走る。手のひらがじんじんと痛い。呼吸が苦しくなり立ち上がれなくなった。 息が出来ない。おそらく注射された薬のせいだ。 「やめて! 死にたくない! 博士! 助けて! 死にたくない! 死にたくない!」 その声には誰にも答えない。ナースコールを押そうと思ってもベッドの上に這い上がることもできなかった。 「あっ、ぐっ、ぅ、やめてっ、死にたく、ないっ……!! 死にたく、なっ……!」 金色の髪が床に広がる。震える手がシーツを掴み、しわを作った途端脱力して床に落ちる。 青い目から光が消え失せ、少女の身体はもうピクリとも動かなかった。 [しおりを挟む] 目次 戻る |