天体観測2 バットマンが多少荒い手さばきで盗聴器と集音器をポーチにしまう。苛立った彼の耳に、風を切る音が聞こえてきた。 音の方向を見れば、はためく黄色いマントが見える。駒鳥の後に続くのは、急所以外の場所をほぼむき出しにした少女の姿。 黒髪の少年が軽やかに着地し、バットマンに駆け寄ってきた。 「電力会社のほうに行ってみたけど、どうやら変電所からの供給がストップしてるみたいだ。原因はまだわかってない」 ビーストはロビンの半歩手前でとまり、手を頭の後ろで組んでいる。 「警察署ではなんかわかったか?」 少女に尋ねられた男は、先刻の不快な声明を思いだし微かに顔を歪めた。だがすぐに気を取り直し、つとめて無表情に事実だけを仲間に伝える。 「ああ。ジョーカーから声明が届いた。10時間以内に10億ドルを用意しろ、だそうだ」 ロビンがバットマン同様顔を歪めた。 「なんだって!? 時間も金額もめちゃくちゃだ!」 一方でビーストは短く口笛を吹き、楽しそうに口の片端を歪める。 「10億ねぇ。いいじゃねぇか派手で。気に入ったぜ」 彼女の言葉を非難したのはすぐ近くにいたロビンだった。 「バカ言うなよ! 街全体を人質に取られたようなものだぞ! それにそんな金額ッ」 「はいはい、わかったよ悪かったよ。軽はずみだったよ」 ビーストが両手を挙げて降参のポーズを取れば、ロビンはますます不機嫌そうに眉を顰める。彼らの口論を遮るようにバットマンが言った。 「無駄口を叩くな」 「ごめん、バットマン」 「へぇーい」 ロビンがまたビーストを睨む。少女はどこ吹く風で相変わらず後ろでに手を組んでいた。注意しようと思ったバットマンは、それより先にやるべき事を思い出して子供たちに背を向ける。 「ゴードンに話を付けてから発電所に向かう」 背後でふたつの軽い足音がした。 「わかったよ、バットマン」 「へぇーい」 まずはジョーカーの凶行を止めることが先決だ。 [しおりを挟む] 目次 戻る |