ジョークプラン「少年にロビンのコスチュームを着せて、どうするつもりだった」 「ヒヒヒヒヒッ! 気になるか? なぁ、気になるよな? やっぱり気になるよなぁ?」 「お前にはまだ痛みが足りないようだ」 ピエロの骨が軋み始める。だが彼はまったく痛みを感じていないかのように笑い、顔を歪めてバットマンを見た。 目が異様なほどギラギラと光っている。 「銀行も! 店も! 停電でセキュリティは動かない! 街のそこらじゅうでお前の小鳥ちゃんが暴れるなんて楽しいと思わないか?」 バットマンの動きが一瞬止まった。 「……なんだと……?」 衝撃を受ける彼とは対照的に、ジョーカーはとても楽しそうだ。彼はいつも罪を犯す時楽しそうに笑っている。なにがウソで真実なのかもわからない。 なにも考えていないのかと思えば、計算しつくされた計画で人々の意表を突く。 「最後にはぜぇーんぶまとめて俺のモンだ! ガキは笑い転げて幸せなままオネンネさせてやるよ!」 道化の言葉を聞いてバットマンの頭に血が上った。 「貴様ッ!」 視界が赤く染まったような感覚だ。パネルに押しつけていたジョーカーの襟首を掴んで持ち上げ、壁に叩きつける。手を後ろ手に拘束されたまま投げられたジョーカーは、そのまま壁に転がってゲラゲラと笑った。 「ヒヒヒヒッ! ジョークだよ、バットマン! ジョークさ、全部ジョークだ!」 バットマンが肩で息をする。すぐにこの犯罪者をきちんと拘束するため、つとめて冷静になってポーチから手錠を取り出した。 途端、背後に気配を感じて振り返る。 廊下で倒した筈の男がひとり、銃を構えて立っていた。 「この野郎ッ!」 怒号とともに引き金がひかれる。 バットマンが攻撃を避けている間に、ジョーカーが体勢を立て直して窓に向かって走っていた。 甲高い音と共にガラスが割れ、ジョーカーが外へ飛び出す。 高笑いが聞こえた。 「惜しかったな、バットマン! 今度はもっと笑える計画を披露してやるぜ!」 銃を持った男もその場から逃走しようとしたが、それを蝙蝠が許す筈もない。バッタランで足を攻撃した後、銃を奪って腕を縛り上げた。そのまま今度はこの男の頭をパネルに叩きつける。 「子供に強盗をさせる気だったろう。計画の詳細を話せ。首をへし折られたいのか」 こちらはジョーカーと違って素直に苦悶の表情を浮かべている。しかしそれでもバットマンを睨み付け、憎々しげに吐き捨てた。 「へっ、そんな脅しに誰がッ!」 言い終わる前に蝙蝠がポーチからスタンガンを取り出す。出力最大にして敵に押しつけると、面白いほど痙攣した後ぐったりと脱力してしまった。 「もう1度くらいたいか」 「わかった! 言う! 言うよ!」 金で動く人間は単純で良い。ジョーカーのように何を考えているかわからないということはなく、脅せば簡単に口を割る。 敵は電撃がよほど恐ろしいのか、早口でまくし立てるよう情報を吐いた。 「ウェストハーロウ3番地の工場跡だ! そこがガキどもとの集合場所だよ! 町中の銀行と店で強盗させて、そこに集まったガキどもに笑気ガスをかける予定だったんだ!」 胸の悪くなるような計画だ。 「そうか」 一言相づちをうったバットマンは、渾身の力で男の顔面を殴り飛ばし、気絶させたあと完全に拘束した。 そうして足早にモニタールームを立ち去り、歩きながら仲間に連絡を入れる。 バットマンが喋るよりも先に、通信機から少年の声が聞こえてきた。 『バットマン! なにかわかったの!?』 「お前の見た少年の他に複数、ロビンに扮装した子供がいるようだ。少年たちは街中の店や銀行で強盗を働く手はずになっている。その後、ウェストハーロウ3番地の工場跡で笑気ガスを散布されて殺される予定だ」 『なんだって!』 「今からゴードンにも連絡し、子供達を保護してくれるように頼む。お前はそこにいる子供を保護し、仲間の説得に協力させろ」 『わかったよ。バットマンは?』 「ここの爆弾を解体したらすぐそちらに向かう」 了解、という少年の声を聞いて通信を切る。向こうには"ネルガル"の傭兵がいるらしいが、ロビンとビーストのふたりならうまくやれるだろう。 爆弾が設置された場所へ急ぎながら、バットマンは手早くゴードン本部長に連絡をいれた。 [しおりを挟む] 目次 戻る |