本番開始3 目を瞑ったままゆっくりと息を吸い込んで、吐き出す。その間に何度も心の中で言い聞かせた。 ――自分の感情と向き合え。コントロールしろ。受け入れた上で、手綱を取れ。 ロジャーが気に入らない。あの偽ロビンの少年を助けたい。ロビンとバットマンの役に立ちたい。 色々な思いがグルグルとまわる。こんな感覚は初めてだった。 これが感情だと言うのなら、なるほど今までのビーストが空っぽだったと言われても頷ける。 彼女が目を開けた瞬間、世界は変わっていた。 ビーストが隠れている場所の直前でクサリフが歩みを止める。少女が自分から出てきたからだ。 彼女がゆっくりとした動作で大男を見た。ロジャーの顔が強ばる。 男の目にビーストが映っている。黒髪に紅い目の少女。 爛々と光る血の色をした目は、彼らにとって力の象徴だ。 「テメェ、暴走……のワリには、静かだな」 少女が口の片端を歪めた。手のひらをクサリフに向けて伸ばし、手招きをして見せる。 「生憎、今までのアタシじゃねぇのさ。かかってきな、闘牛野郎」 [しおりを挟む] 目次 戻る |