ROBIN's War1 同じマントが二つ、ゴッサムの上空にはためいた。明かりの消えた街ではバットマンの要請で警察がパトロールを強化している。 偽ロビンを抱えたままビルからビルへ飛び移ったロビンが呟いた。 「どこもかしこも警官だらけだ。これなら君の仲間たちもすぐ強盗しようとは思わないだろうな」 偽ロビンが街に視線を落とした。飛んだ当初はかなり怯えていたが、今では周囲を見渡す余裕が出てきている。 なかなか肝の据わった少年だ。 「あの銀行も襲う手はずになってたはずだ! あそこに連れてってくれ!」 ロビンも銀行に視線を移す。横の路地にいくつかの人影が見えた。おそらくあれが偽ロビンの仲間だ。 「OK、上手く説得してくれよ」 地面に下りるためもうひとつグラップネルガンを取り出し、銀行の屋上目がけて打ち出す。 「あぁ……っ、ひぃっ!」 急降下した途端、偽ロビンが情けない悲鳴を上げた。無視して路地に突っ込んでいき、周囲に気づかれないよう人影の背後に降り立つ。 思った通りロビンと同じ格好をした子供が10人ほど立っていて、空からの訪問者に目を見開いていた。 屋上にとりついたワイヤーを外したロビンがグラップネルガンをポーチにしまう。 「見事に僕のコスプレばっかりだ」 彼の独り言を聞き届けた者は殆どいない。サイドキック姿の子供たちは、ロビンよりも偽ロビンのほうに意識を集中させていた。 「グレッグ! どうしたんだよ! そいつ誰!?」 どうやら偽ロビンはグレッグと言うらしい。仲間の対応を見る限り、リーダー格のようだ。彼は急降下によって乱れた呼吸を整え、仲間たちに向かって言う。 「大変なんだ! 聞いてくれ! 俺たち利用されてたんだ! ジョーカーのところに金を持っていっても、殺されて金を奪われるだけだ!」 少年たちが顔を見合わせた。 「なんだって!?」 「でももう強盗しちまった奴もいるんじゃねぇのか?」 「それ本当なのかグレッグ!」 「本当だ! バットマンの仲間が俺たちの集合場所まで知ってたし、ロジャーもどうせ殺すって言ってた! 「チクショウ、騙しやがって!」 やはり仲間の言葉には威力があるようだ。ロビンが言ってもこんなにすぐには信用して貰えないだろう。 彼らの表情は怒りと落胆がない交ぜになっている。よく見ると全員顔色が優れないし、手足も折れそうなほど細かった。 最初のグレッグとほぼ同じ反応だ。 これしか道がないから、やるしかなかった。 この道まで閉ざされたら、あとはのたれ死ぬしかない。 ロビンはやはり、かける言葉が見つからなかった。 自分のすぐ近くで生きるか死ぬかの生活をしている人間がいる。 その事実が、ただ苦しい。 崖っぷちの彼らに声をかけたのは、同じく崖っぷちに立っているグレッグだ。 「まだ間に合うかもしれない! 他のところに行った仲間にも声をかけてやめさせるぞ! せめてあいつらの計画めちゃくちゃにして、痛い目みせてやる!」 それはさっきビーストも言っていたことだった。彼の言葉を聞いて、少年たちの表情が変わる。 グレッグの1番近くに立っていた少年がまず声をあげた。 「そうだな!」 後を追うように、他の少年たちが叫び始める。 「好きなように利用だけされてたまるかよ!」 「おいみんな散らばれ!」 「他の襲撃予定場所どこだっけ?」 「1番近いのは宝石店だぜ」 「足の速い奴は北の銀行にいけよ! 宝石店はチビどもにまかせよう!」 仲間のなかでも幼い3人が宝石店に向かって駆けていく。 様子を見ていたロビンがグレッグの肩に手をかけた。 「ここから1番遠い場所は? 時間のかかりそうなところは僕と君で行こう。それが1番早い」 グレッグがロビンの方を振り向いた。彼は一拍おいて静かに頷き、あらためて仲間に視線を移す。 「俺たちも他の連中に声かけてくる! 北側の襲撃予定地は全部おれたちが声かけてくる! 30分後ここに全員集合だ! 頼んだぞ!」 ロビンが口元に笑みを浮かべ、再びグラップネルガンを取り出す。 「君、グレッグっていうんだな。じゃあ行くぞ、グレッグ!」 ふたりがまたゴッサムの上空へ飛び上がる。残された子供たちがはためくマントを見上げ、呟いた。 「もしかして、あれが本物のロビンかなぁ」 「はじめて見た」 「すっげぇ……」 [しおりを挟む] 目次 戻る |