Never, never, never, never give up!1 ビーストの首がロジャーの腕に掴まれる。マズいと思った時には手遅れだった。 腹に大砲でも当たったかのような衝撃が走って、身体が軽くなった気がする。 「がっ……ぁっ!」 後方でビチャビチャと水気を帯びた音がした。振り向くことはできない。首を大きな手に掴まれ身体が固定されているからだ。 銃を持つ手に力が入らない。太いロープのようなものがヘソから這い出てくる感覚がした。足元でビチャリと音がする。 視線だけを動かすと、足元に赤い塊が落ちていた。腹には大穴が開いている。 捕らえられた状態で腹を殴られたからだろう。腕の力が抜けて、銃が血だまりの中に落ちた。 霞む視界いっぱいにロジャーの粗野な笑みが広がる。 「テメェ、その銃ゴム弾じゃねぇか。殺す気でくりゃあまだいくらでも勝負できただろうに、飼い犬ってのは難儀だなぁ?」 侮蔑に満ちた声がした。胸から下の感覚がもうない。首は絞められて呼吸ができなかったが、かろうじて声が出た。 なんとか口の片端を歪め、笑って見せる。 「へっ、もう勝った気でいんのか? まだまだ、これからだぜ」 ロジャーの笑みが深くなった。腕に力が入り、首の骨がギシギシと軋む。 「本当に口の減らねぇガキだ」 「がっ、あ゛ぁっ、あっ……!!」 息が出来ない。咳き込んだビーストの口から血があふれ出した。反動で身体が揺れ、腹の大穴から肉と血の塊が地面へ落ちる。ボタボタと汚い音がした。 意識が遠のいていく。このままでは危険だと、彼女の脳内で何かが警報を鳴らした。 「がっ、あ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛っ!! ぐっ、ぐるっ、る゛ぅッ!! うう゛ぅッ!!」 意思とは別に身体が動く。口からは意味の無いうなり声が漏れ出し、感覚のなかった腹に痛みが戻ってきた。飛び散った肉片と血が身体の中で再構成されていく。 命の危機に瀕してニナズが回復能力を高めたようだ。 ロジャーが舌打ちする。 「とうとう暴走しやがった」 ビーストが首にかかった男の手を振り払うよう、太い腕に爪を立てた。しかし相手もそれくらいでは動じない。 戦闘服越しに分厚い皮膚を裂き、筋肉を傷つけても男は手を離さなかった。それどころか腕に力を込め、ビーストの首をしめる。 「このままその頭ブチ割れば俺の勝ちだ」 少女が咳き込み、また血があふれ出した。男を蹴って脱出を試みるも、腹に穴の開いた状態では上手くいかない。 ロジャーの腕からビーストの手が剥がれ落ちた。 意識が朦朧とする。 「ぐっ、ぅう゛ぅう゛ッ!!」 口から出るのは低いうなり声ばかり。ヘッドギアを引っ張られたあたりで最後に思い切り暴れた少女は、それでも首を絞める腕から脱出できずにいた。 身体がゆっくりと弛緩していく。 彼女が意識を手放そうとした瞬間、身体がなにかに引っ張られた。 [しおりを挟む] 目次 戻る |