Never, never, never, never give up!2「ぎゃぁあああああっ!」 大男の悲鳴が聞こえる。腕から血を流しのたうち廻るロジャーの横にバッタランが転がった。静止と同時に軽い爆発を起こす仕掛けのものだ。 あの男はしばらく放っておいてもいいだろう。問題は血まみれの少女だ。 男を攻撃すると同時に助け出した少女は、現在ロビンの腕の中で意識を失っていた。 「ビースト! ビーストしっかりしてくれ!」 呼びかけても返事はない。 傷はふさがりかけ出血も止まっていたが、凝固した血が身体中にこびりついていたし、周囲の床や壁にも赤黒い汚れがついている。 「ビースト!」 必死に呼びかけるロビンの横で大男が立ち上がった。 「ちくしょう、ちくしょうっ、いてぇ、いてぇじゃねぇかっ! このクソガキがッ! がっ、うぅ゛う゛っ、ちくしょうっ! ちくしょうっ!」 低くうわごとを繰り返し、口の端からは唾液が漏れている。それほど強い爆発ではなかったはずだが、随分とダメージがあったようだ。涙で潤んだ目は怒りに満ちており、理性まで失ったように見える。 「テメェからまずぶっ殺してやるッ!」 クサリフが拳を振りかぶる。気絶したビーストを抱えたロビンは避けられない。咄嗟に少女を庇うよう身を乗り出した。ロッドを構えて敵の攻撃を受け止めようと試みるが、力負けするのは目に見えていた。 拳が目前まで迫る。気絶した少女を背中に庇った彼は、大きな拳が目の前からかき消えるのを目撃した。 爆発音のような轟音が響き、男の身体が真横に吹っ飛ぶ。 クサリフの代わりにロビンの目の前へ躍り出たのはフォークリフトだ。 運転席にはグレッグと彼の仲間がふたり乗っている。 ロビンの後を追い、フォークリフトをロジャーにぶつけたのだ。 「グレッグ! くるなっていっただろう!」 ロビンが怒鳴ると、フォークリフトに乗った少年のひとりが口を尖らせる。 「助けてやったのに礼もなしかよ!」 しかしグレッグは駒鳥の非礼より彼の背後に庇われたビーストのほうが気になるようだ。 「そんなことよりロビン! その子は大丈夫なのか!?」 もうひとりの少年もグレッグにつられて心配そうに眉を顰めた。 「すごい血だぜ! まさか死んだのか!?」 「大丈夫生きてる!! 生きてるさ……!!」 叫んだロビンの声は、最後に少し擦れてしまった。脈はあるし呼吸はしている。気絶しているだけだ。ビーストは生きている。 本当は死ぬような怪我でも生きているのが彼女の最大の特徴だ。本当なら死ぬような怪我でも、どれだけ痛みが伴おうとも起き上がるのが、彼女の最大の特徴だ。 ロビンが再び少女を抱き起こすと、彼女の睫毛がピクリと揺れた。 「んっ……」 「ビースト!」 どうやら意識を取り戻したらしい。ロビンの声を聞いて少女がゆっくりと目を開けた。腹部の傷は完全に塞がっている。 虹彩は血のように赤かった。 「悪いな、寝てたぜ」 少女はロビンの肩を軽く掴んで上半身を起こす。手にこびりついた血はすでに赤黒く変色して固まっていた。 「もう大丈夫なのか!? それに、目……!!」 「訓練じゃ上手く行ってただろ? そんなに不安がるんじゃねぇよ、お兄ちゃん」 ビーストがロビンの肩を何回かタップした。駒鳥が不安そうな顔をする。少女は安心させるように笑って見せた。 彼らの奥でうめき声が聞こえる。 「ぐっ、ぅ、う゛う゛っ、てめぇ、らぁっ……!!」 壁に激突したクサリフがふらつきながらも立ち上がる。やはり大袈裟なほど痛みを感じているようだ。逆上した彼はフォークリフトの少年たちを睨み付け、また叫ぶ。 「ご、の、クソガキどもがぁっ!!」 [しおりを挟む] 目次 戻る |