RAGE OF DUST

啖呵1


 クサリフがフォークリフトに襲いかかる。走ってくる巨漢を見て、当然子供達はパニックになった。

「うわぁあああああああッ!」

 ロビンが叫ぶ。

「危ない! 逃げろッ!」

 グレッグたちがフォークリフトの座席から腰を浮かせた。間に合わない。
 駒鳥が動く前に獣が動く。

「やらせるかよ、クソ野郎ッ!」

 振り下ろされた拳を少女の腕が受け止める。大男が忌々しげに舌打ちをする。先ほどまでは痛みで半狂乱だったクセに、もう冷静さを取り戻していた。

「死にかけてたクセにしぶとい野郎だ!」

「ハッ、テメェのオカマパンチなんかで誰がくたばるかよ。ツボマッサージのサービスかと思ったぜ!」

 ロジャーの拳がビーストを少しだけ後方に押しやった。

「減らず口のクソガキが! その口動かせねぇようにしてやるよ!」

 少女が男の拳を跳ね上げ、懐にもぐり込む。腹部を数発殴り、蹴り飛ばしてロジャーにたたらを踏ませた。

「今度はあたしの番だな! クズのプライドって奴を見せてやるぜ、ゴミ野郎!!」

 少女が追撃を仕掛けるため地面を蹴り、ロジャーの顔を蹴ろうとしたところで足首を掴まれ投げ飛ばされた。

「クズのプライドだぁ!? 笑わせんじゃねぇ! テメェにプライドなんかあるわけねぇだろ! ご主人様の顔色うかがって生きてるだけの雌犬が!」

 宙を舞う少女の身体をクサリフが蹴り飛ばした。ビーストの身体がキリモミ状態で地面に落ちてくる。彼女の身体目がけてもう一度ロジャーの蹴りが飛んできた。
 ビーストは激しく揺れる視界で攻撃に焦点を定める。
 体勢を無理矢理立て直し、大男の足に両足と片手をついて着地した。
 すぐさま男を蹴り返そうと足を伸ばしたが、クサリフの腕がそれをはじく。

「どうやって今の"ご主人様"に取り入った? ええ? 殺すしか能のねぇテメェがよぉ! 蝙蝠様はペドフィルの気でもありやがるのか?」

 少女が男から距離を取り、猫のように軽やかに地面へ着地する。ロジャーが近くにあったコントロールパネルを引き抜いた。バリバリと激しい音がしてコードが千切れていく。コンクリートにヒビが入り、ビーストに向けて投げつけられる。
 腹部に鉄の塊を受けた少女が、機材ごと壁に叩きつけられた。
 そこ目がけてロジャーが拳を振りかぶる。コントロールパネルごとビーストを叩きつぶす気なのだ。
 だが少女のほうもすぐさま反応した。
 クサリフの拳が突きささる前に、床を滑るようにして機材と壁の隙間から抜け出す。
 男の背後に回り込んで後頭部を蹴り飛ばした。
 そうして回転しながら空中を舞い、フォークリフトのすぐ横に着地する。

「ほら、テメェら早く逃げろ!」

「あ、ああ!」

「サンキュー!」

 バタバタと子供たちが逃げていく。クサリフが立ち上がり、ビーストを睨み付ける。

「クソ雌犬が、蝙蝠のだけじゃ咥えたりねぇってか?

 子供たちが全員避難したのを見届けて少女も男を見た。
 犬歯をむき出しにして凶暴に笑う。

「いってろよ、牛野郎。テメェの相手してくれんのがママだけだからってスネんじゃねぇや」

 ロジャーがビーストの足を掴む。腕を振り回して何度か少女の身体を床にたたき付けた。行動だけ見れば癇癪を起こした子供のようにも思える。
 文字通り人形のように扱われたビーストが口から血を吐き出した。

「げふっ、ぐっ、ぁっ、がはっ!」

 苦悶する少女を見下ろして男が言う。

「テメェと駒鳥が蝙蝠の穴なのか、テメェが駒鳥と蝙蝠の穴なのか、どっちだ?」

 地面に伏せたままの少女がロジャーを睨み付けた。
 男は薄笑いを浮かべたまま、分厚い拳を少女の腹部に突き立てる。
 ビーストがまた咳き込んだ。

「ぐぶっ」

「なんにしろよぉ、女扱いしてもらってよかったじゃあねぇか! 雌犬から売女に昇格したってわけだ!」

 男が今度は足を上げた。少女を踏みつぶすつもりなのだろう。
 ビーストはダメージのせいで上手く動けない。
 行動したのはロビンだった。
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