啖呵2「ビーストを離せッ! 汚い手で触れるなッ!」 棍棒が敵の足元を攻撃する。クサリフがバランスを崩して後ろ向きに倒れた。 その間に少年が仲間を抱きかかえ敵と距離を取る。 彼は倒れた男に向かってステッキを突きつけ、声を荒げた。 「貴様ッ! それ以上言うなら顎を外してやるッ!」 助け出されたビーストがロビンの肩に手を置く。 「おい、熱くなるなよ駒鳥。クールに行こうぜ」 「ビーストッ! お前はなんで怒らない! 僕もバットマンもお前も、バカにされてるんだぞッ!」 「挨拶変わりだろ。頭にきてたらキリねぇさ」 やはり受けた傷は既に治っている。赤く変化した虹彩が一瞬ロビンを捕らえて笑った。友人に向ける気安い笑み。悪友を見つけたかのように、少女が歯を見せて笑う。 「でも助かったぜ。ありがとうよ」 なんだか気恥ずかしくなってしまったロビンのほうが、先に少女から視線を外した。 「仲間なんだから、当たり前だろ」 ビーストがまたロビンの肩を軽く叩く。ゆっくり駒鳥の横を通り過ぎた。血の色をした目で、起き上がる大男を睨み付ける。 男も起き上がり、粗野な笑みを浮かべて少女を睨み付けた。 「なんだよ、駒鳥ちゃんはすっかりテメェがお気に入りらしいな? 筆おろしでもしてやったのか?」 「テメェは筆おろしがまだなんだって?」 それが合図だったかのように、ふたり同時に地面を蹴る。 殴りかかるクサリフの攻撃をビーストが跳んで避けた。 空振りした拳を足で蹴り、反動でより高く跳んだ。 空中で一回転し、男の首に足を巻き付ける。 そのまま上半身を後ろに倒すと、敵の身体も自然と倒れた。 床に大男をたたき付け、ビーストが低く笑う。 ロビンに見せたものとは違う、歯をむき出しにした威嚇の笑みだ。 「あいにく筆おろしはしてやれねぇが、代わりに足でイカせてやるよ」 大男が呻いた。少女の足がクサリフの頸動脈を締め上げる。所謂三角締めだ。 「ぐっ、ぐがっ、このっ」 男が暴れるが、ビーストに拘束を解く様子はない。 しばらくみっともない足掻きを見せていたロジャーはこれまでの戦いが嘘のようにあっけなく、意思を失って大人しくなった。 ビーストがポーチからワイヤーを取り出し、気絶した男を手早く拘束する。 「手こずらせやがって! 牛は大人しく寝てろってんだ。なあ、ロビン?」 彼女の横に、あきれ顔のロビンが歩み寄ってきた。 「君、その下品な言葉選びはなんとかならないのか?」 「なんだよ、恥ずかしいってか?」 ロビンが眉を顰めた。 「そんなことばかり喋ってるとクセになる。バットマンに怒られるよ」 「ボスは生真面目だからな。まあ、改善の努力はするぜ」 ビーストが敵の拘束を終え、気絶した男の背中に腰掛ける。駒鳥にも座るように促したが、首を振るだけで拒否されてしまった。 [しおりを挟む] 目次 戻る |