後日談1 数日後、ウェイン邸の食堂にブルースとディック、祐未が集まっていた。祐未の椅子の前にはディックやブルースの2倍といって良い量の料理が並んでいる。 ほとんどがケーキやアイスクリーム、クッキーなどで構成されたその食事を、小柄な少女がどんどん口に運んでいった。 彼女に寄生している地球外生命体"ニナズ"の活動を維持するためだ。脳に寄生しているソレは、特に糖分を必要とするらしい。 回復能力を酷使した後などは特に顕著で、停電事件の翌日などはいつもの食事の他に、3ホールのケーキと1ダースのクッキーを平らげていた。 ブルースがナプキンで口を拭き、クッキーを食べる少女に声をかける。 「祐未、身体の調子はどうだ」 食べながら喋るなとアルフレッドにきつく言われている祐未が、クッキーを急いで飲み込んだ。 「いつも通りピンピンしてるぜ」 「そうか……ならいい」 ディックは彼の不器用な優しさに気がついたが、祐未はそういう機微に疎い。次の言葉を探せないブルースが黙ったのを良いことに、また食事を再開した。見ているほうが胸焼けしそうな量だ。 プリンの容器を手に持った祐未がブルースを見る。 「ところで、あのガキどもどうなった?」 ディックが口をへの字に曲げた。 「ガキども」 皿を下げに来たアルフレッドが、祐未の背後でわざとらしく咳払いをして見せた。 「祐未様、言葉使いがいつまでたっても直りませんな。夜遊びをやめれば少しは改善されますかな?」 「嘘だろオイ、夜遊びしたの1回だけじゃねぇか!」 スプーンを握りしめた祐未が抗議する。アルフレッドは祐未が空にした2枚の皿を持ち、再び咳払いをした。 肩を竦めた少女がわざとらしく首を傾げる。 「お……お友達の、みなさんは、あのあとどうなったのかしらぁ?」 固い笑顔の祐未を見て、ディックが裏返った声を出した。 「うっわ、不自然!」 ブルースが息子を一瞥し咎めるような声をだす。 「ディック、やめなさい」 それから彼はマカロンに手を伸ばす娘を見た。 「彼らはきちんと信頼できる孤児院に預けられた」 ブルースの後を追うようにディックが言う。 「昨日様子を見てきたけど、みんな元気そうだったよ。グレッグがリーダーになってみんなをまとめてるみたい」 「そりゃいい。あいつ度胸あるからな」 「君も入れ知恵してたしね」 「バレてら」 祐未が肩を竦める。アルフレッドは皿を厨房に持っていった。ディックが全て見透かすような目で祐未を見る。彼の口元には笑みが浮かんでいた。 「祐未も今度一緒にグレッグたちの様子見に行く?」 「えー、いいよ。お前みたいにウソ得意じゃねぇからすぐバレちまいそう」 「遠くから見るだけなら?」 マカロンを食べていた祐未が動きを止める。 「それなら行く」 「帰りにアイス食べて帰ろう」 少女の黒い目が輝いた。 「お前天才だな」 ブルースが呆れた様子でため息をつく。 「様子を見に行くのか遊びにいくのかわかったものじゃないな、おまえらは。きちんと勉強をやったあとに行くんだぞ」 祐未の手が今度はドーナツを取る。口を尖らせて不満顔だ。 「アルフが監視してんだぞ、勉強しないで行けるわけねぇじゃん」 ディックは相変わらず目を細め、余裕の笑みを浮かべていた。 「祐未はアルフレッドに弱いからなぁ」 祐未が少年を睨むと、彼が肩を竦ませる。ただし笑顔はそのままだ。 ブルースは子供達のやりとりを放置して、アルフレッドの持って来た新聞を広げた。 一面の見出しを見た瞬間、眉を顰める。 [しおりを挟む] 目次 戻る |