トライゲート橋にて1 トライゲート橋はゴッサムシティ通行の要だ。大きな橋で通行量も多い。たもとの西側に、不審な船舶が停止していた。その周囲に5人ほど武装した男がいる。100m先に2台の大型トラック。 グラップネルガンを使って空中を移動していたバットマンが、背後にいるビーストとロビンにハンドサインを出す。 サイドキックがふたり同時に地面へ着地して走り出した。バットマンもふたりの動きを確認した後、上空から船に乗り込む。 地上から襲撃したビーストが最初に遭遇した敵を殴り飛ばした。 「ぐぶっ!」 殴られた衝撃で彼の撃った弾丸が空に放たれる。音を聞きつけた敵がふたり、船から下りてきた。左右から銃口を向けられた少女が口笛を吹く。 「nice try」 言葉と同時にショルダーホルスターから拳銃を二丁取り出しそれぞれ構えた。敵に一瞥もくれず至近距離からゴム弾を放つと、肩から血を出して男たちが倒れる。 近くにいたロビンが咎めた。 「ビースト! 必要以上に痛めつけるな!」 酒場でビースト自身が言っていた様に、ゴム弾は至近距離から撃つと鉛玉より酷い傷になる場合がある。『貫通させない』という目的においては非人道的とされるホローポイント弾と原理は同様である。 お小言を聞いて少女が笑う。 「All right、ブラザー。お前にお休みのキスする時みたいに優しくしてやるさ」 「僕、君におやすみのキスされた時ないんだけど」 「そうだったか?」 ロビンが背後から迫る敵に視線を向け、男の持つ銃をグラップネルガンで取り上げた。続けてもうひとつワイヤーガンを取り出し敵を捕らえる。移動する時と同じ要領で敵に向かい飛んでいった。駆けつけてきた男ふたりを巻き込み、合計3人をドロップキックで蹴り飛ばす。 次の目標は停車している大型トラックだ。ふたりで車の屋根に飛び乗り、ビーストは荷台、ロビンは運転席側に向かう。 駒鳥がグラップネルガンを構え、運転席にいた男をワイヤーで窓から引きずりだした。 「ぎゃぁっ!」 悲鳴を黙らせるように、少年の肘が男のこめかみに突き刺さる。白目を剥いて気絶した男を再び座席に押し込めた。 しかし短い声でも、見張りはしっかり聞いていたらしい。 「なんの騒ぎだ!?」 見張りの男とロビンの目が合う。数はふたりだ。銃口を向けられたため、小型爆弾を投げて相手を吹き飛ばした。 「ぎゃぁっ!」 「ぐあっ!」 地面に転がったふたりの顔面にそれぞれ拳を叩き込み気絶させる。 そうしてすぐ、荷台側にいったビーストをサポートするためトラックの屋根を走り出した。 一方、ビーストは荷台の前にいた見張りふたりの間へ飛び降り、足を大きく開いて同時に蹴り飛ばす。 片膝をついてその場に着地した少女がトラックの荷台を開ける。 2台の大型トラックの両方か、あるいはひとつに被害者たちが隠されているはずだった。 「おい、誰かいるか!」 しかし彼女が目にしたのは怯えた少女たちではなく、武装した3人の男。 「撃て!」 三丁のアサルトライフルから鉛玉の雨が降ってくる。身体のあらゆる場所に弾丸が食い込み、少女の身体に激痛が走った。 「がぁあっ!」 悲鳴を上げてビーストが仰け反り、その場に倒れる。コンクリートの地面に血だまりが広がっていった。 彼女を撃ち殺した男たちが声を上げる。 「あいつ、"ビースト"だろ! バットマンのとこのガキだ!」 「バットマンがきやがった!」 「ビビるんじゃねぇ! ひとり仕留めたんだ、あとのふたりだって殺せる!」 彼らの頭上には駒鳥がいた。黄色いマントを靡かせ、微かに眉を顰める。声を上げては敵に気づかれてしまうため、彼は小さな舌打ちだけに止めた。 そうしてトラックの荷台にスモークペレットを投げ入れる。 「ビースト」 呼びかけると、血だまりに沈んだ少女が即座に起き上がった。トラックの中では男たちが3人咳き込んでいる。 赤黒い血にまみれてビーストが笑った。唸る野犬のように歯をむき出しにした、凶暴な笑み。 「All right」 呟くやいなや彼女は煙の中に突っ込んでいく。ロビンは小型の酸素ボンベを咥えて彼女に続いた。 「誰が誰を仕留めたって!? あぁ!?」 少女がコンパスのように足を回転させ、男たちを転倒させる。床に頭を打ち付けたひとりに肘を落とし、すぐ横にいた敵の腹部に踵を落としていた。 ロビンは1番奥にいる男へ目がけて跳躍し、顔面を踏みつけるようにして気絶させたのだった。 [しおりを挟む] 目次 戻る |