消えたdaydream

トライゲート橋にて3


 売り飛ばされそうになっていた30人の少女のうち、攫われた子供が20人。親に売られた子供が10人。うちすでに性的暴行を受けたと思われる子供が15人もいた。
 バットマンは駆けつけたゴードン本部長と今後の対応を話し合っている。親に売られた子供をどこの孤児院に預けるべきかとか、事情聴取を女性刑事に行わせた方がいいとか、そういう話だ。
 ふたりともいつもより表情が暗かった。
 それはそうだろう。こんな結果、ロビンも気が滅入る。すでに犯罪者たちは捕らえられていて、怒りを向ける先はなくなってしまった。
 少年は目の前に広がる川を睨み付け、腹の底で渦巻く苛立ちを吐き出す。

「親に売られたなんてあんまりだ。そのうえ、もう乱暴されてる子たちまでいるなんて」

 答えたのは、ロビンの隣で同様に川を睨み付けているビーストだった。

「商品の味見って奴だな。初物は高値で売れるから、まだ無事だろうと思ってたが……見通しが甘かったな。チンタラしてる場合じゃなかった」

 商品の味見。初物。高値。すべて吐き気のする言葉だ。被害者を人と思っていない犯罪者視点の言葉。それを仲間の少女が言ったのかと思うとどうにかなりそうだった。

「そんな言い方はやめてくれ」

 けれど、彼女が悪いわけではない。少女は言葉を知らないだけだ。彼女の言葉が事実であることも知っている。てっきり怒ると思ったのに、ビーストはただ川の流れを見つめているだけだった。

「そうだな。悪かった」

「……八つ当たりだよ。なんでもすぐに謝らないでくれ」

「難しい野郎だ」

 ビーストが目を片方だけ歪めて皮肉げに笑う。
 彼女はロビンに八つ当たりされてどう思ったのだろう。被害者の少女達を見たときどう思ったのだろう。
 ニヒリズムと諦観に覆い隠されて、いつだって彼女の本音は見えてこない。
 川は街の明かりを反射していた。まるで光沢のある黒い蛇だ。生き物のようなそれを見つめてロビンが呟く。

「……君に聞きたいことがあるんだけど、聞いて良いのか解らない」

 ビーストの表情は変わらなかった。彼女もロビン同様、ただビル群の映り込んだ水面を見つめている。

「今できる話じゃあねぇな。一段落したら部屋に来いよ」

「……ああ」

 ゴードンとの話し合いを終えて、バットマンがふたりの元にやってくる。マントが風にたなびいていた。

「ロビン、ビースト。帰るぞ」

「わかったよ、バットマン」

「へぇーい」

 それぞれ返事をしてグラップネルガンを取り出す。ゴードンの視線に見送られ、彼らは上空に舞い上がりその場を後にしたのだった。
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DANGERHAPPY