Ivy

協会を出て家に帰る途中の森へ入る
森と言っても木々が沢山あるだけのどちらかと言ったら林みたいなところ
少し奥に入るとお日様がそこだけ特別に照らしているみたいな所があった
近くに水場がある為かヒンヤリしている
「綺麗…」思わずそう呟いてホゥと息を吐く
なんてロマンチックなんだろう…
頬を撫でる風も、揺れる花木も、波立つ水面もこの世の物とは思えない
まるで絵本の中の妖精の国だ
少しウットリしていた所、
「何してるんだい」
誰かが右耳に囁いた
突然の事でビックリして「ひぅっ」なんて情けない声を出して右耳を覆って振り替える

そこには宙に浮いた男性がいた
いや、正しくは男性ではなく黒い角に翼のいわゆる悪魔だった

人間って本当に驚くと声が出ないんだね
パクパクと金魚の様に口を動かす私の前で愉快そうに笑う悪魔(?)

「君なんだい、さっきの声『ひぅっ』ってあはははは!」
人生で初めて会った悪魔がこんなにウザいなんて…
羞恥心で真っ赤だった顔がサァっと青くなる
まず悪魔自体に会いたくなかった
悪魔って何効くんだっけ???
ニンニク?日光??ロザリオ???
取り敢えず首元のロザリオを力一杯握り締めた

「君さっきから赤くなったり青くなったり面白いね
あぁ、そんなのじゃあ効かないよ」
スゥっと目を細められてなんだか心を読まれている感じがする
そんなのとはロザリオの事だろうか、しかしいくら効かないと言われても握り締めるのは止めない
だって怖いもん
私は蛇に睨まれた蛙の様にその場から動けなくなっていた
頭の中を廻るのはギルベルトの言葉
オオカミの方がよっぽど良かったよ
なんでギルベルトの忠告を聞かなかったんだろう、私

そんな事もお構いなしに彼は話を続ける
「ここが気に入ったのかい?」彼はそう言うとパチリと指を鳴らした
するとグニャリと視界が周り辺りはさながら地獄へと変わった
「うええええ!」
嘘だろ、夢を目の前でぶち壊された子供の気分だ
そんな私の反応に満足したのかケラケラと笑い再び指を鳴らした
すると次はまたあの妖精の国に戻った
いったい何が起きてるんだ??
?が頭に一杯の私に彼はズイと近づいた
「君って本当に表情がクルクル変わるね」
気に入ったよ!なんて言い出す始末だ
ん?今なんて?キニイッタ?それ何語だ

「だから、俺が君を気に入ったんだよ」
彼はそう言うとニヨリと笑った
「そんな君には特別に何でも願いを叶えよう
どんな事でも良いよ
ブルジョワになりたい、美しくになりたい、意中の人に好かれたい何でも、ね」
何だかすごく含みのある言い方だ
「で、貴方への見返りは?」
ジトリと睨みそう返すと、「俺の気分次第さ」とウインクで返された
願いを何でもか…これならお母さんの病気を治せる?でも見返りが怖いし悪魔に助けられるって…うーん…
「ちょっと保留で良い?」
考え出した結果がそれだった
そんな一時の判断に任せちゃダメだよね
意外にも彼は「もちろんさ!」と胡散臭い笑顔で返した
「でも、2…3つだけ
君の名前を教えてくれよ
で、俺の名前がアルフレッドだぞ!
名前呼び以外は受け付けない
あと、君の願いが決まるまで毎日ここに来て
逃げられるなんて嫌だからね」
拒否権はないんだぞ!とまで言われた
拒否権無いのか…
と言うか、仮にも悪魔に名前を教えるって大丈夫なんだろうか?
そんな不安とは反対にスラスラと言葉が出てくる
「あー、私は**
分かったよアルフレッド、毎日ね」
協会の帰りにでも寄ってやるか
「Thank you ** .」
適当にあしらっていたらいきなり頬をにキスされた
「ふぁっ??」
勿論この反応を見てアルフレッドはケラケラ笑った