2016/09/21
顔から火が出る。 - 鋸鮫
手をつないだ、初めての彼氏の顔を思い出せない。
繋がれた手のひらの熱い温度と磯においと、蒸された酸味が漂う空気の中で、ああ、私、恋なんかしたことなかったんだなあ、と、思った。
「…っあ、とめて、ぇ、あ、あ」
質量のある男の中指が、丁寧に真奥をほぐす。
肩こり。自分でマッサージをすると、痛くなる前にブレーキがかかるのと同じで、自慰はほんとに慰めるくらいの強さしかかけてなかったんだ、と気が付かされる。
身体が跳ねる。男の吐息は乱れもしない。顔を見れない。目を見れない。私ばかりがイヤラシイ。
「やだ、やめて…っ、ねえ、あ!」
涙が浮かぶけどこぼれない。
羞恥心は行き過ぎると集中力を欠く。
燻り続ける中途半端な快楽が拷問のように続く。
「ん?」
目があう。
とろりと垂れるような殺意が、食べられてしまうんじゃないかって。
「……ああッ」
頭が白いモヤに落ちる。
快楽に沈む。
「そ、こ、」
「ここが、何だ?」
少し早くなる彼の指。
はやく、はやく飛んで。
「ん、」
好きすぎて緊張する。はやく交替したい。気持ちよくなって欲しいのに、前戯の時間が永遠のように長い。
「…っふ、ぁ、」
握る手に力を込める。
快楽が寄せては返す波のように行ったり来たり。
ちゃんと、濡れてるらしいのだけど。
今日もイケそうにないな。少し、膣が痛い。
「ね、…も、入れて、いい?」
男の太腿に手を這わす。
ああ、と指が抜かれる。
少しだけ彼のものを口に含んで、大きくさせる。
だけど、いつも思う。
最初から元気にならないのって、やっぱり私に魅力がないから、なのかなって。
「…んっ、」
男の吐息が漏れて、口が痛くなるくらい大きさが増す。
良かった、と私はやっと安心する。
「どうしたら良いか、教えて」
またがって見下ろした男は暗く笑う。
突き上げられて、涙が溢れる。
ーー私たち、相性よくないよね?
肉体と呼吸のリズムが合わないことが、こんなにも心を絶望させるなんて、知らなかったよ。
「あ、い…ッ、あ!あ!」
ぐいっと起き上がった男が、私の両足を彼の肩に乗せて、夢中で腰を打ち付ける。
痛い。なんて。言わない。
好きだ。…好き。